最新記事

金融

量子コンピューターがビットコインを滅ぼす日

2016年10月13日(木)16時00分
アンソニー・カスバートソン

 こうした性能を持つ量子コンピューターがいつ登場するかは、トムリンソンにも予測できないが、研究開発の進展ぶりから、その日が近づきつつあることは確かだという。欧州委員会も今年、「量子革命」の実現を目指し、10億ユーロ(11億ドル)の研究開発資金を提供すると発表した。

 カナダのディー・ウェーブ・システムズなど、一部の企業は既に量子コンピューターの生産にこぎつけているが、専門家によると、これらは厳密には量子コンピューターと呼べるマシンではない。「ディー・ウェーブのマシンは学界では認められていない」と、ドイツの研究機関・統合量子科学技術研究所のトマソ・カラルコ所長は最近、本誌に語った。それでも英企業ケンブリッジ・クォンタム・コンピューティングの共同創業者イリヤス・カーンによると、量子技術が現実の世界で重要な役割を果たすようになるのは「時間の問題で、それもかなり短期間に」実現するという。

量子暗号化で対抗

 量子コンピューターの暗号解読からビットコインを守るには、ビットコインのプロトコルに新しい量子暗号化技術を組み込む必要がある。実はこうした技術は既に存在しており、問題はそれを導入するかどうかだ。ビットコインの推進団体ビットコイン財団のリュー・クラーセン理事長は、「多くの非常に聡明な暗号作成者たち」が既に解決に乗り出しており、量子コンピューターに耐えられる技術が徐々にネットワークに浸透するだろうと語っている。

 だがトムリンソンは、まだ解決されていないビットコインの問題点を指摘し、これに異議を唱える。

「ビットコインは消滅する運命にある。破壊的な新技術を導入するにはコミュニティーの合意が必要だが、発行量の上限問題ですら合意はできていない。デジタル署名のやり方を完全に変えるとなればもっと厄介だ」「合意形成はまず不可能。だとすれば、ビットコインはもうダメだということだ」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ドイツ外相の中国訪問延期、会談の調整つかず

ビジネス

ヘッジファンド、AI関連株投資が16年以来の高水準

ワールド

ロシア、米欧の新たな制裁を分析中 国益に沿って行動

ワールド

「オレオ」のモンデリーズ、新AIツールでマーケティ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 2
    「ママ、ママ...」泣き叫ぶ子供たち、ウクライナの幼稚園をロシアが攻撃 「惨劇の様子」を捉えた映像が話題に
  • 3
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシアに続くのは意外な「あの国」!?
  • 4
    ハーバードで白熱する楽天の社内公用語英語化をめぐ…
  • 5
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 6
    「宇宙人の乗り物」が太陽系内に...? Xデーは10月2…
  • 7
    国立大卒業生の外資への就職、その背景にある日本の…
  • 8
    【ムカつく、落ち込む】感情に振り回されず、気楽に…
  • 9
    汚物をまき散らすトランプに『トップガン』のミュー…
  • 10
    為替は先が読みにくい?「ドル以外」に目を向けると…
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 5
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 6
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 9
    「ママ、ママ...」泣き叫ぶ子供たち、ウクライナの幼…
  • 10
    ハーバードで白熱する楽天の社内公用語英語化をめぐ…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中