最新記事

安全保障

フィリピンのドゥテルテ大統領、アメリカ軍との軍事同盟維持表明

2016年10月13日(木)11時01分

10月12日、フィリピンのドゥテルテ大統領は既存の防衛条約や軍事同盟を今後も維持する意向を表明した。発言により、米国とフィリピンの安全保障関係に関する先行き不透明感が増し、混迷は深まった。写真は同日、マニラで講演する同大統領(2016年 ロイター/Damir Sagolj)

 フィリピンのドゥテルテ大統領は12日、既存の防衛条約や軍事同盟を今後も維持する意向を表明した。発言により、米国とフィリピンの安全保障関係に関する先行き不透明感が増し、混迷は深まった。

 過去1週間にわたって反米的な物言いを繰り返してきた大統領は発言を一転させ、米国との防衛同盟の維持を示唆。外交政策については「再編成」を意図していると主張した。一方で、10年来の伝統となっている米軍との合同軍事演習は中止すると改めて述べた。

 外交政策の再編成の一部は、中国やロシアと交渉を申し入れることにある。大統領の両国に対する評価は高く、10月18日から21日にかけての中国訪問を皮切りに、数週間以内に両国を訪問する予定だ。

 マニラで沿岸警備隊を前に演説した大統領は「既存の条約はわれわれに傘を差し掛けてくれるかもしれず、それを破ったり、廃止する必要はない」と指摘。「われわれは全ての軍事同盟を継続する。なぜなら、彼らがわれわれの防衛に必要だと言うからだ」と述べた。「彼ら」が誰を指すのかは明言しなかった。

 米軍との合同演習については「私は再編成を求める。来年からは演習の予定はない。準備しなくてよい」とし、「ロレンザーナ国防相には来年の準備の中止を指示した。もう必要ないのだ。今後、私が独立した外交計画を策定する」と述べた。

 ドゥテルテ大統領は先週、アメリカのオバマ大統領に「地獄に落ちろ」と述べるなど、米国との関係を損ねる発言を繰り返した。フィリピンは米国の支援を「懇願しない」とも述べ、米国の諜報機関による追い落とし工作にも立ち向かうとした。

 前ダバオ市長で独自路線を貫くドゥテルテ大統領は、かつての米国による統治支配に怒りを表明し、大統領が推進する麻薬撲滅策の過激さに米政府の懸念を示していることを「叱責」と呼び、反発した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

訂正-メルセデス、中国パートナーとの提携に投資継続

ビジネス

ホンダ、カナダにEV生産拠点 電池や部材工場含め総

ビジネス

スイス中銀、第1四半期の利益が過去最高 フラン安や

ビジネス

仏エルメス、第1四半期は17%増収 中国好調
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 7

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中