最新記事

中国

石炭ブーム終焉で中国の地方を襲う地盤沈下、膨らむ経済負担

2016年8月17日(水)18時22分

8月14日、約30年にわたる炭鉱ブームが終わり、炭鉱のあった市町村が沈下する危険があることから、中国当局はそのような場所に暮らす住民をコミュニティーごと避難させる必要に迫られている。写真は、炭鉱近くの地盤沈下する地域にある見捨てられた家屋。 山西省大同で1日撮影(2016年 ロイター/Jason Lee)

 中国北部山西省にある炭鉱業中心地の奥深く、Helin村の住民たちは、崩れ落ちる地面に対し、勝ち目のない戦いを余儀なくされている。彼らには、ひびを直したり、壁を再び築いたり、長年の採炭活動でできた陥没穴を埋めたりすることしかできない。

 同省孝義市の郊外に位置する、小高いこの村にある約100もの坑道は採掘し尽くされ、埋められたが、不安定で崩れやすい斜面には集落が群がっている。

 地元当局は最も危険地域にいる何十万人もの住民の避難を開始しているが、Helin村の状況は深刻ながら優先度が高いとはいまだ見なされていない。

「まだ避難するよう言われてはいない。指示があれば、喜んで避難する」と、家族とワンルームの賃貸アパートに暮らすWang Junqiさんは話す。「ここは安全ではない。お金がある人はすでにこの地を離れた。恐ろしいが何もできない」

 約30年にわたる炭鉱ブームが終わり、炭鉱のあった市町村が沈下する危険があることから、中国当局はそのような場所に暮らす住民をコミュニティーごと避難させる必要に迫られている。

 山西省だけでも、来年末までに約65万5000人を移住させる計画だが、その費用は推定158億元(約2405億円)かかるとみられている。同省政府の試算によると、炭鉱による「環境経済的損失」は770億元に上るという。

地質学的災害

 炭鉱によって誘発される地盤沈下は中国に限ったことではないが、同国の問題は他国のそれを小さく見せるほどだ。

 Helin村からそう遠くない場所にある、見捨てられた村の共産党ビルに設置された掲示板は、その問題の規模を把握するためのヒントを示している。

 そこには、23の村に広がる19カ所の地質学的な「災害激甚地」が掲示されており、地滑り55件、地割れ950件、炭鉱による地盤沈下808件が報告されていた。その全てはわずか13.25キロ平方メートル内で発生していた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾巡る日本の発言は衝撃的、一線を越えた=中国外相

ワールド

中国、台湾への干渉・日本の軍国主義台頭を容認せず=

ワールド

EXCLUSIVE-米国、ベネズエラへの新たな作戦

ワールド

ウクライナ和平案、西側首脳が修正要求 トランプ氏は
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 2
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 5
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 6
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 7
    「裸同然」と批判も...レギンス注意でジム退館処分、…
  • 8
    Spotifyからも削除...「今年の一曲」と大絶賛の楽曲…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中