最新記事

日本

皇室は安倍政権の憲法改正を止められるか

2016年8月16日(火)16時20分
ビル・パウエル

 2015年8月15日には、終戦70年を迎えた全国戦没者追悼式において次のように述べた。「ここに過去を顧み、さきの大戦に対する深い反省と共に、今後、戦争の惨禍が再び繰り返されぬことを切に願い、全国民と共に、戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し、心からなる追悼の意を表し、世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります」

 日本の皇室ウォッチャーの間では、安倍を始めとする保守派が目指す憲法改正に対し、天皇が反対の意思を示したものと解釈されている。

 皇位継承者である皇太子も天皇と同様の考えであるとされる。皇太子は、55歳の誕生日を迎えた2015年2月に記者会見でこう述べた。「私自身、戦後生まれであり、戦争を体験しておりませんが、戦争の記憶が薄れようとしている今日、謙虚に過去を振り返るとともに、戦争を体験した世代から戦争を知らない世代に、悲惨な体験や日本がたどった歴史が正しく伝えられていくことが大切であると考えています」

 この言葉もまた、改憲勢力を牽制したものであると受けとめられている。

 安倍が憲法改正から手を引く可能性は低く、歴史的な論争へのお膳立ては整ったと言えよう。この論争は、日本国内においてきわめて大きな影響を持つ。論争の一方は政治的エシュタブリッシュメント、もう一方が、表向きは「非政治的」とされる皇室だからだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、領土交換はウクライナに決めさせる 首脳

ビジネス

中国人民銀行、物価の適度な回復を重要検討事項に

ビジネス

台湾、25年GDP予測を上方修正 ハイテク輸出好調

ワールド

香港GDP、第2四半期は前年比+3.1% 通年予測
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化してしまった女性「衝撃の写真」にSNS爆笑「伝説級の事故」
  • 4
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 5
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 6
    債務者救済かモラルハザードか 韓国50兆ウォン債務…
  • 7
    「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」(東京会場) …
  • 8
    【クイズ】アメリカで最も「盗まれた車種」が判明...…
  • 9
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 10
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた「復讐の技術」とは
  • 3
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 4
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 5
    職場のメンタル不調の9割を占める「適応障害」とは何…
  • 6
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 7
    【クイズ】次のうち、「軍用機の保有数」で世界トッ…
  • 8
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 9
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 10
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失…
  • 6
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 9
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 10
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中