最新記事

映画

画期的ホラー『死霊館』の続編で、ひと味違う背筋の凍る体験を

2016年7月8日(金)16時10分
エイミー・ウエスト

少女ジャネット(マディソン・ウルフ)と家族を襲う怪奇現象の正体は…… ©2016 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

<実在の心霊研究家夫妻を主人公にした異色作『死霊館』にファン待望の続編が。ストーリーとドラマが光る極上の心理ホラー>

 ジェームズ・ワン監督の『死霊館』(13年)は、実在のアメリカ人心霊研究家ウォーレン夫妻を主人公にした異色のホラー。「いわくつきの映像」という設定の「ファウンド・フッテージ(発見された未編集の映像)」ものとも、スプラッターものとも違う、画期的なホラー映画として批評家から絶賛され、歴代有数の興行収入を達成した。

 同じくウォーレン夫妻が追った実在の事件を描いた続編『死霊館 エンフィールド事件』も前作ファンの期待を裏切らない上々の出来栄えだ。

 77年、ロレイン・ウォーレン(ベラ・ファーミガ)は夫エド(パトリック・ウィルソン)とロンドン北部エンフィールドに向かう。そこではシングルマザーのペギー・ホジソン(フランシス・オコナー)と4人の子供たちを超常現象が襲い、特に次女ジャネット(マディソン・ウルフ)が数々の怪奇現象に苦しめられていた......。

【参考記事】恐怖の「それ」がえぐり出す人生の真実

 エンフィールド事件といえば、アメリカのアミティビル事件(長男が家族を皆殺しにした後で悪霊に命じられてやったと証言、映画『悪魔の棲む家』のモデルにもなった)と並び称される有名な超常現象だ。ワンは今回そのエンフィールド事件を題材に、超常現象が現実に存在するかどうかについても、明確な見解を打ち出そうとしている。

 映画の冒頭、アミティビル事件の真相を確かめるべく降霊術を試みたロレインは、戦慄の体験を通して長男の言葉に嘘はなかったのだと悟る。この短いが強烈なシーンに続いて、再びウォーレン夫妻の生き方とその代償に光が当てられる。特にロレインは持ち前の強さと情熱と精神力に加えて、前作でちらりとのぞかせた不安もにじませる。

 ファーミガとウィルソンの息はぴったり。夫妻の人柄と関係の温かさが伝わる。登場人物の身を本気で心配してしまうホラー映画なんて、新鮮だ。

 2人の役作りはむしろヒューマンドラマ向きで、それがこの作品を人間味あふれる奥行きのあるホラー映画にしている。悪霊にとりつかれる話はホラーでは珍しくもないが、感情移入せずにいられない2人の演技が陳腐なストーリーに命を吹き込んでいる。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

トランプ氏、雇用統計「不正操作」と主張 労働省統計

ビジネス

労働市場巡る懸念が利下げ支持の理由、FRB高官2人

ワールド

プーチン氏、対ウクライナ姿勢変えず 米制裁期限近づ

ワールド

トランプ氏、「適切な海域」に原潜2隻配備を命令 メ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 3
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿がSNSで話題に、母親は嫌がる娘を「無視」して強行
  • 4
    カムチャツカも東日本もスマトラ島沖も──史上最大級…
  • 5
    【クイズ】2010~20年にかけて、キリスト教徒が「多…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    これはセクハラか、メンタルヘルス問題か?...米ヒー…
  • 8
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 9
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 10
    ニューヨークで「レジオネラ症」の感染が拡大...症状…
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 8
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 9
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 10
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 5
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 6
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 7
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 10
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中