最新記事

自動車

フォルクスワーゲンみそぎなき黒字回復、排ガス不正はなかったことに?

2016年6月21日(火)17時26分
リア・マグラス・グッドマン

 昨年夏にニューハンプシャー州でVWのターボディーゼル車ジェッタを購入したロバート・シュピラも同じ意見だ。「1年近くたってもVWが行動を起こさず、何が起きたのかを説明できていないのは本当に腹立たしい」が、ジェッタの燃費とトルク(エンジンの回転数)は気に入ったという。シュピラもケリハーもディーゼル車はもう買わないが、不正発覚を機にVWを見限るつもりはないという。

 目下、最大の関心事は、VWが果たして真相を明らかにするのかどうか。そして、米司法省および米規制当局との和解の結果、厳しい選択を迫られるのかどうかだ。

 米司法省とVWは排ガス不正問題の解決策として、対象車両を買い取るか、アメリカの排ガス基準を満たすよう修理する方向で大筋合意している。最終合意は夏になる見込みだが、買い取り対象は不正が発覚したディーゼル車のうち排気量2・0リットルの車のみで、排気量3・0リットルの車については未定。関係筋によれば、対象車の所有者には個別に「かなりの額の賠償金」も支払われるという。

 愛車には満足しているが買い取りを希望すると、シュピラとケリハーは言う。「修理を選んだら、低燃費で高トルクという今のメリットがなくなってしまうかもしれない」とシュピラ。「つまり修理したらかえって悪くなるわけだ」

 ケリハーも同じ意見だ。「修理したらまず間違いなく、これまでどおりの走りは期待できないだろう。燃費もトルクも落ちたら、いらいらするだろうな」

株主の怒りは収まらない

 一方、VWの主要株主の一部は同社の不透明さにいら立ちを募らせている。英大手運用会社ハーミーズ・インベストメント・マネジメントと欧州の投資顧問会社デミノール、ドイツの株主協会DSWは、VWの経営陣と監査役会が不正問題での情報開示義務に違反している可能性を調査するよう求めている。

 これら3つの法人株主は、VWが調査を委託している米法律弁護士事務所ジョーンズ・デイの独立性も疑問視している。彼らは、ジョーンズ・デイの調査対象は経営陣のみで監査役会は含まれていないと指摘。今月下旬にドイツのハノーバーで開かれる株主総会で、調査対象の拡大を要求する可能性がある(ジョーンズ・デイ側はコメントを拒否)。

 一方、徹底的に賠償を求める株主もいる。ノルウェーの政府系ファンドである政府年金基金は、VWに約32億5000万ユーロの損害賠償を求めるドイツでの集団訴訟に加わると発表した。原告はVWの約280の法人株主で、不正問題を受けて株価が急落したことに憤っている。

 投資家が損をしたにもかかわらず、当のVWは急速に持ち直している。今年第1四半期の営業利益は3・4%増の34億4000万ユーロ。昨年の赤字転落が嘘のようだ。

 株価も昨秋下落したものの大部分は持ち直し、先月後半は130ユーロ前後で推移。不正発覚前並みの140~150ユーロに徐々に近づいている。世界販売台数でも、今年第1四半期はライバルのトヨタを抑えて世界トップに返り咲いた。

 この快進撃が続けば、ジョーンズ・デイの調査報告を公表する筋合いはない、というのがVWの本音だろう。どうやらあの白旗は降伏の印ではなく、急場しのぎのポーズにすぎなかったようだ。

[2016年6月21日号掲載]

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

NATO燃料網、数百キロ東へ延伸を ロシア有事に備

ワールド

ロシア、イラン指導者殺害を非難 米・イスラエル攻撃

ワールド

中国、中東での停戦仲介継続へ=外相

ビジネス

ウニクレディトCEO、コメルツ銀への提案条件改善を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が発生し既に死者も、感染源は「ナイトクラブ」
  • 2
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 3
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 4
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 5
    住宅建設予定地に眠っていた「大量の埋蔵金」...現在…
  • 6
    モジタバの最高指導者就任は国民への「最大の侮辱」.…
  • 7
    「ネタニヤフの指が6本」はなぜ死亡説につながったの…
  • 8
    ガソリン価格はどこまで上がるのか? 専門家が語る…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    「危険な距離まで...」豪ヘリに中国海軍ヘリが異常接…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 3
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製をモデルにした米国製ドローンを投入
  • 4
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 7
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 8
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 9
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 10
    住宅建設予定地に眠っていた「大量の埋蔵金」...現在…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中