最新記事

米連邦公開市場委員会、金利据え置き決定 識者はこうみる

2016年6月16日(木)10時08分

 6月15日、米連邦準備理事会(FRB)は開催した連邦公開市場委員会(FOMC)で、政策金利の据え置きを決定した。写真はイエレン議長(2016年 ロイター/Kevin Lamarque)

米連邦準備理事会(FRB)は15日まで開催した連邦公開市場委員会(FOMC)で、政策金利の据え置きを決定した。ただ、労働市場は再び力強さを増すとの見方を示し、年内2回の利上げを実施するとの姿勢は維持した。市場関係者の見方は以下のとおり。

●利下げ以外で最大限のハト派姿勢強調

<ウェルズ・ファーゴ・ファンズ・マネジメントの首席ポートフォリオストラテジスト、ブライアン・ジェイコブソン氏>

利下げ以外で最大限のハト派姿勢を示した格好だ。米カンザスシティー地区連銀のジョージ総裁も反対票を撤回した。金利軌道の見通しが引き下げられ、大きなハト派シグナルとなった。

●金利見通し、極めて劇的に変化

<クレディ・アグリコルの世界金利戦略部門責任者、デビッド・キーブル氏>

ドット・プロットは、2018年のフェデラルファンド(FF)金利見通しの中央値が60ベーシスポイント(bp)と大幅に低下した。非常にハト派的な事態の展開で、米連邦公開市場委員会(FOMC)声明などの大半の要素を占めた。4月から現時点まで、データが大きな変化を示したのは、非常に弱い5月雇用統計だけだったことを踏まえれば、金利の道筋が変わったのは極めて劇的だ。

●7・9月利上げの可能性ある、タイミングが焦点

<OANDAのシニア市場アナリスト、アルフォンソ・エスパルサ氏>

おおむね予想通りだった。経済見通しでは2017─18年の金利見通しが引き下げられ、それほど大きな自信がないことが示された。個人的には7月、もしくは9月の利上げの可能性は残っていると考えているが、FRBから強い示唆は得られなかった。

景気はまちまちとなっていることは利上げの可能性に対する確信がなお存在していることを示しており、利上げに踏み切るタイミングがFRBにとり最大の焦点となっている。

●大統領選後の11月利上げの可能性

<ケンブリッジ・グローバルペイメンツ(ニューヨーク)のシニア市場アナリスト、スティーブン・ケーシー氏>

かなりハト派的な声明だった。連邦準備理事会(FRB)は国内情勢については大きく懸念していないようだが、外部要因については用心深く見守る姿勢を示し、ハト派に転じた。

11月の米大統領選挙後に利上げに動く可能性がある。11月利上げの確率は35─40%と見ている。

●金融政策すべてやり尽くす、据え置きの有効性低下

<リッジワース・インベストメンツの資産配分部門幹部、アラン・ゲイル氏>

決定が全会一致となったことが興味深い。英国の欧州連合(EU)離脱の是非を問う来週の国民投票や、予想を大きく下回った5月の雇用統計を背景に生じた不透明な状況が米連邦準備理事会(FRB)の判断に影響し、状況の推移を見守ると全会一致で決めた。

(金融緩和は株式・債券相場を)緩やかに下支えすると思うが、金融政策でできることはすべてやり尽くしたという見方が強まっていると信じる。こうした政策据え置きの動きは、有効性を失いつつある。

●年内1回の利上げ予想重要

<チャールズ・シュワブのトレーディング・デリバティブ部門責任者、ランディー・フレデリック氏>

第一印象はそれほど驚く内容でなく、反応がかなり抑制的だったことを踏まえれば、市場もさほど驚いていない。まったくうろたえていない。

非常に重要な点は、年内1回の利上げが適切と考えた投票メンバーが6人いたことだ。私自身、そのような見方をとる。仮に米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長が、2回行うというこれまでの見方にこだわっていれば、市場は否定的に反応した可能性がある。

●声明とドットチャート、共にハト派的

<BMOキャピタルマーケッツ(ニューヨーク)の金利ストラテジスト、アーロン・コーリ氏>

ハト派的だった。ドットチャートもハト派的なメッセージを発している。

このところの状況や、英国の欧州連合(EU)離脱をめぐるリスクのほか、インフレ期待の一部弱含みなどを踏まえ、市場ではFRBはトーンを若干和らげるとの見方が出ていた。

全般的に見てハト派的な声明だった。

●特定のシグナル感じられず

<ハイ・フリークエンシー・エコノミクス(HFE)の首席米国エコノミスト、ジム・オサリバン氏>

連邦準備理事会(FRB)当局者は年内に再び引き締めるとみられるが、一部の当局者は引き締め姿勢を弱めた。当局者らは低調だった雇用統計について、軽視するようなこともあまり発言していない。どのようなイベントであれ、慌てているようには感じられないものの、特定のシグナルもあまり感じられない。

●3年後も利上げ局面の終了想定せず

<ノムラの米金利戦略部門責任者、ジョージ・ゴンカルベス氏>

残りの米連邦公開市場委員会(FOMC)会合の回数から、年内2度の利上げの可能性は残るが、バイアスは1度の利上げに傾いているようだ。

より重要なのは、長期的な金利見通しの引き下げで示されたハト派姿勢だ。2018年の中央値は3月時点の3%から2.375%に下がった。これは3年経っても、利上げ局面を終えていないことを示唆しており、かなりハト派的なメッセージだ。

●これ以上の積極性低下は想像しがたい

<バークレー・ハイツ(ニュージャージー)のシニア・マーケット・ストラテジスト、ピーター・ケニー氏>

これ以上積極性が弱まるとは想像しがたい。世界的な逆風が見通しの下方修正につながったことは明白だ。

声明にサプライズがあったとは思っていない。市場の予想通りだった。



[15日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ軍撤退なければ、ドンバス地方を武力で完全

ビジネス

アングル:長期金利2.0%が視野、ターミナルレート

ワールド

中国、レアアース輸出ライセンス合理化に取り組んでい

ワールド

ADBと世銀、新協調融資モデルで太平洋諸島プロジェ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与し、名誉ある「キーパー」に任命された日本人
  • 3
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国」はどこ?
  • 4
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 7
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 8
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 9
    台湾に最も近い在日米軍嘉手納基地で滑走路の迅速復…
  • 10
    見えないと思った? ウィリアム皇太子夫妻、「車内の…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 6
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 7
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 8
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中