最新記事

領土問題

マレーシア、南シナ海めぐり対中国戦略を見直しへ

2016年6月6日(月)19時09分

6月1日、マレーシアは、経済と安全保障のバランスを模索しつつ、さまざまな戦略を進めている。写真は中国の沿岸警備艇。南シナ海で2014年3月撮影(2016年 ロイター/Erik De Castro)

 マレーシアのサラワク州沖で3月、同国の沿岸警備艇が大型の船舶を確認した。乗組員たちは仰天した。その船が警告のサイレンを響かせながら、高速でこちらに突き進んできたからだ。その後、同船が針路を変えると、船腹に「中国海警局」の文字が刻まれているのが見えた。

 マレーシア海上法令執行庁(MMEA)の当局者によれば、油田で潤うミリ市沖合の南ルコニア礁付近では、以前にも中国海警局の艦艇が何度か目撃されている。だが、今回のように攻撃的な遭遇は初めてだという。

「私たちからは、恐らくこちらをどう喝するために突進しようとしているように見えた」とある当局者は言う。この人物は、公的に発言する資格はないものの、ロイターの取材に対して、これまでに報道されていなかった同事件を記録した動画を見せてくれた。

 この事件の他にも、同じ時期に当該海域に100隻ほどの中国漁船が現れたことに刺激されて、マレーシア国内の一部では、強大な隣国である中国に対し、従来は控えめだった批判を強めつつある。

 ある上級閣僚は、南シナ海で領有権をめぐる対立が起きている岩礁・島しょの周辺で中国が力を誇示しているなかで、マレーシアはこうした領海侵犯に対抗しなければならない、と話している。

 フィリピン、ベトナムなど、南シナ海での領有権紛争に関与している諸国は、以前から中国の強引な姿勢への警戒心を強めていた。米中間の対立も高まっており、この2つの大国は、年間約5兆ドル(約540兆円)もの貿易を支える重要な水路を軍事化しているという非難を応酬している。

 だがマレーシアの場合、中国との「特別な関係」を掲げ、また貿易と投資への依存度が高いため、従来、この地域での中国の活動に対する対応は、西側諸国の外交関係者から「控えめ」と表現される程度のものだった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トムソン・ロイター、第1四半期は予想上回る増収 A

ワールド

韓国、在外公館のテロ警戒レベル引き上げ 北朝鮮が攻

ビジネス

香港GDP、第1四半期は+2.7% 金融引き締め長

ビジネス

豪2位の年金基金、発電用石炭投資を縮小へ ネットゼ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 8

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 9

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 10

    「みっともない!」 中東を訪問したプーチンとドイツ…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中