最新記事

中国経済

謎の「当局者」発言で、中国株式相場が急落

人民日報が掲載する「当局者」発言がたびたび市場にダメージを与えている

2016年5月12日(木)19時08分

5月11日、中国共産党の機関紙、人民日報が掲載したある「当局者」の発言が株価急落を招いたとして非難されていることが分かった。この人物は9日付のインタビューで、中国における過剰な信用拡大は景気後退につながりかねないと述べており、匿名の当局者の発言が金融市場に及ぼすダメージに関して批判が巻き起こっている。写真は2015年10月、北京で(2016年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

 中国共産党の機関紙、人民日報が掲載したある「当局者」の発言が株価急落を招いたとして非難されている。この人物は9日付のインタビューで、中国における過剰な信用拡大は景気後退につながりかねないと述べた。匿名の当局者の発言が金融市場に及ぼすダメージに関して批判が巻き起こっている。

 多くの投資家は、記事が中国政府の内部に亀裂が生まれていることを示唆していると受け止めた。第1・四半期の新規の人民元建て融資は急増したが、政府は抑制策をほとんど講じなかった。一方で、複数のインフラ構築計画を発表し、弱含む経済を刺激するための試みだと広く受け止められた。

 インタビューに応じた人物は「経済成長の加速を目的に金融を緩和することで、レバレッジが縮小するという幻想を完全に捨てるべきだ」と述べた。

「景気刺激策主導の道に戻れば、懸念が高まり市場は戸惑う。どうしたらいいのか分からなくなるだろう」と加えた。

 市場は戸惑わなかった。株式相場はすぐさま下落した。

 上海総合指数<.SSEC>は3%近く値下がりし、ロイターの試算によると2110億ドルを超える時価総額が吹き飛んだ。

 損失を出した一般投資家のDing Ou氏は「これまでの政策と矛盾するため、はじめは(記事が)偽造されたものかと思った」と述べる。「この記事は確実に相場に打撃を与える。以前はかなり前向きだったが、今は悲観的になってきている」と付け加えた。

 アイビー・キャピタルのファンドマネジャー、Shen Weizheng氏も同じ意見で「政策当局者の間で大きな亀裂があることを示すもので、投資家を混乱させる」と話す。

 人民日報はコメントの要求に応じなかった。

 株価を左右したとして人民日報が批判されたのは初めてではない。政府系機関紙は広くこうした批判を浴びている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

マツダ、関税打撃で4━9月期452億円の最終赤字 

ビジネス

テスラ、巨大AIチップ工場を計画 インテルと提携も

ビジネス

3メガバンクなど、ステーブルコイン共同発行・検証へ

ワールド

各国首脳、気候変動対策の停滞に不満 米政府の姿勢も
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 4
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 5
    「これは困るよ...」結婚式当日にフォトグラファーの…
  • 6
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 7
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 8
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 9
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 10
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中