最新記事

【2016米大統領選】最新現地リポート

クルーズ撤退、ヒラリー敗北の衝撃

トランプが共和党統一候補とほぼ「見なされる」一方、民主党ヒラリーは失言で思わぬイメージダウン

2016年5月4日(水)17時00分
冷泉彰彦(在米ジャーナリスト)

インディアナ州予備選の敗北を受けて共和党第2位の候補クルーズは選挙戦からの撤退を表明した Chris Bergin-REUTERS

 3日のインディアナ州予備選の惨敗を受けて、共和党のテッド・クルーズ候補は電撃的とも言える「撤退」を表明した。圧勝したドナルド・トランプ候補は、これによって共和党の統一候補と「見なされる」ことになった。

 それにしても、クルーズ陣営の「崩壊」は多くのアナリストの予想を越えていた。つい1週間前まで、多くの世論調査でリードしていたインディアナでフタを開けてみれば「53%対37%(開票率80%時点)」と大差で敗北したのである。

 理由は4つ挙げられる。

【参考記事】日本は「トランプ外交」にどう対抗したらいいのか?

 1点目は「ケーシックとの2位・3位連合」の失敗だ。トランプを「過半数割れ」に追い込むという目的で、オレゴンとニューメキシコではケーシック、インディアナではクルーズに得票を集めるという「協定」を結んだのだがマイナスだった。福音派を中心とするクルーズ支持層と、中道的な現実主義を支持するケーシック支持層は水と油だったのだ。

 2点目は、「副大統領候補にカーリー・フィオリーナを指名した」ことだ。投票日直前になっての発表も唐突なら、いくら「軍事タカ派・社会価値観タカ派」的な言動をしている女性であっても、IT巨大企業の元経営者という人選は、インディアナの庶民感覚とは乖離していた。

 3点目は、ネガティブ・キャンペーンの失敗だ。クルーズ陣営は、一週間に1000万ドル(約10億円強)という巨費を投じて、「トランプ批判」のCMを流し続けた。だが、キャンペーンの結果は、「相手の積極的支持層の団結」を生む一方で「自陣営への嫌悪感の拡散」も伴い、完全な失敗だったと見られている。

 4点目は、ここへ来て「ドル安+株安」という経済の変動が見られたことだ。IT企業などの3月決算も悪く、景気の先行きに重苦しいムードが漂っている。そんな中、「アメリカ第一主義で雇用を再生する」という、トランプのメッセージが驚くほど票を吸い寄せたということが言える。

 それにしても意外だった。ここでのクルーズの「撤退」は、メディアも予想していなかった。そもそも、こんな大差の敗北は誰も予想していなかったが、とにかく展開が急だ。

 投票終了が東部時間の19時で、すぐにCNNなどはトランプに当確を出した。その後、19時半ごろからクルーズ派が集結して、候補者本人のスピーチを待ったが、結局登場までには1時間近くかかった。まず、クルーズの両親が出てきたので、多くの人は「おや?」と思ったのではないだろうか。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ南部オデーサに無人機攻撃、2人死亡・15

ビジネス

見通し実現なら利上げ、不確実性高く2%実現の確度で

ワールド

米下院、カリフォルニア州の環境規制承認取り消し法案

ワールド

韓国大統領代行が辞任、大統領選出馬の見通し
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 10
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中