最新記事

タックスヘイブン

米政府の新たな税逃れ抑制策、外国企業も直撃か

税負担の少ない国や地域への本拠地移転を目的に行う企業買収を法的に規制

2016年4月13日(水)11時08分

4月11日、米財務省は今週、税逃れを抑制するための新たな規則を発表。この中には米企業だけでなく、外国企業も方針変更を迫られかねない内容が含まれている。写真はオバマ米大統領。イリノイ州で7日撮影(2016年 ロイター/Jim Young)

  米財務省は今週、税負担の少ない国や地域への本拠地移転を目的に行う企業買収(インバージョン)を抑制するための新たな規則を発表した。この中には米国企業だけでなく、外国企業も方針変更を迫られかねない内容が含まれている。

 外国企業にとって問題となるのは、企業グループ内の貸借取引に関する規則。それによると、ある企業の米国子会社が海外の親会社から借り入れをした場合、3年以内に配当支払い、ないしは親会社の株式購入という形で海外に資金を移転させれば、米税務当局からその借り入れは債務ではなく資本とみなされる。つまり、債務における利子が米国の所得税から控除されなくなる。

 この規則の狙いは、本拠地を移した米企業がグループ内の資金の貸借取引を利用して米国内から海外に実質的に利益を移転させるのを防ぐことだ。ただ、同じような手法で米国における税負担を軽減している欧州企業も、今後大きな影響を受ける可能性がある。

 専門家は、欧州企業はグループ内の債務を通じて利益を米国外に移転し続けることは可能だが、これまでよりもずっと長い期間をかけて実施する必要が出てくるかもしれないとの見方を示した。

 ハーバード大学のスティーブン・シェイ教授(法学)は「ルールの枠組みを大きく変えるのは間違いない」と述べた。

 シェイ氏は、取得した米子会社に目いっぱい親会社から借金をさせていた従来のようにはいかなくなると予想。もっとも実際にどの程度制限されるかはわからないとも話した。

 一方で外国企業の米子会社の団体である国際投資機構(OII)のナンシー・マクラーノン理事長は、外国企業が米国で子会社に借金をさせて恒常的に利益を海外に移転していることはないと言明。「(米当局は)いったい何の問題を解決しようとしているのか」と疑問を呈した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

カタール、ガス生産国に貿易障壁反対を呼びかけ

ビジネス

中国系電池メーカー、米工場の建設断念 ミシガン州が

ワールド

「経済あっての財政」が基本、戦略的に財政出動 高市

ワールド

英財務相、所得税引き上げ検討 財政赤字削減で=ガー
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 2
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシアに続くのは意外な「あの国」!?
  • 3
    「ママ、ママ...」泣き叫ぶ子供たち、ウクライナの幼稚園をロシアが攻撃 「惨劇の様子」を捉えた映像が話題に
  • 4
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 5
    ハーバードで白熱する楽天の社内公用語英語化をめぐ…
  • 6
    「宇宙人の乗り物」が太陽系内に...? Xデーは10月2…
  • 7
    国立大卒業生の外資への就職、その背景にある日本の…
  • 8
    汚物をまき散らすトランプに『トップガン』のミュー…
  • 9
    【ムカつく、落ち込む】感情に振り回されず、気楽に…
  • 10
    「石炭の時代は終わった」南アジア4カ国で進む、知ら…
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 5
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 6
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 9
    「ママ、ママ...」泣き叫ぶ子供たち、ウクライナの幼…
  • 10
    ハーバードで白熱する楽天の社内公用語英語化をめぐ…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中