最新記事

せキュリティ

iPhoneロック解除方法、FBIの情報秘匿は正当化されるか

2016年4月3日(日)20時00分

 同グループで議長を務める、ホワイトハウスのサイバーセキュリティ―担当者、マイケル・ダニエル氏は2014年4月にブログで、秘密保持は時に正当化されると指摘。「脆弱性を明らかにすることは、テロリスト攻撃の阻止につながる極めて重要な情報を収集する機会を失うことになりかねない」と説明した。

 国土安全保障省に勤務した経験を持つ、コンサルティング会社「レッド・ブランチ・コンサルティング」の創業者ポール・ローゼンツバイク氏は、アップルの脆弱性が同グループで審査対象にされなければ「衝撃を受ける」と述べた。ただ、FBIがファルーク容疑者の端末を保管しているとみられ、セキュリティー被害拡大の脅威はほとんどないことから、脆弱性の公表を余儀なくされる可能性は低いとの見方を示した。

 過去に米国家安全保障局(NSA)で法務を担当した弁護士のスチュワート・ベイカー氏は、ロック解除技術がFBIに協力した第三者が所有しているものとされれば、審査プロセスは複雑化する可能性があると述べた。

 FBIに協力した企業については、モバイルデータの犯罪捜査(フォレンジック調査)を手掛けるイスラエル企業のセレブライトだと一部専門家は指摘している。同社はコメントを控えている。

 FBIが脆弱性の公表を免れても、アップルはロック解除方法の共有を引き続き要求することは可能かもしれない。

 司法省は、薬物捜査に関連してアップルにアイフォーンのロック解除を命じるようニューヨークの裁判所に訴えている。関係筋によると、政府がこの要求を取り下げなければ、アップルはこの訴えを利用してロック解除に用いた技術をFBIに明らかにさせることができるかもしれないという。

 一方、政府の審査がFBIに技術公表を求める結果になると考える専門家もいる。ジョージア工科大学の法学教授、ピーター・スワイア氏は、政府の規定は「幅広く利用されている商業ソフトウエアの防衛技術の重要性を強調」しており、アップルに脆弱性を伝える「揺るぎない」理由が存在するとの見解を示した。

 (Dustin Volz記者 翻訳:本田ももこ 編集:加藤京子)

 

[ワシントン 30日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場・序盤=反落、米中貿易戦争巡る懸念で 

ビジネス

日本の経済成長率予測を上げ、段階的な日銀利上げ見込

ビジネス

今年のユーロ圏成長率予想、1.2%に上方修正 財政

ビジネス

IMF、25年の英成長見通し上方修正、インフレ予測
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国EVと未来戦争
特集:中国EVと未来戦争
2025年10月14日号(10/ 7発売)

バッテリーやセンサーなど電気自動車の技術で今や世界をリードする中国が、戦争でもアメリカに勝つ日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 2
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由とは?
  • 3
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道されない、被害の状況と実態
  • 4
    メーガン妃の動画が「無神経」すぎる...ダイアナ妃を…
  • 5
    車道を一人「さまよう男児」、発見した運転手の「勇…
  • 6
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 7
    筋肉が目覚める「6つの動作」とは?...スピードを制…
  • 8
    連立離脱の公明党が高市自民党に感じた「かつてない…
  • 9
    あなたの言葉遣い、「AI語」になっていませんか?...…
  • 10
    1歳の息子の様子が「何かおかしい...」 母親が動画を…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    ロシア「影の船団」が動く──拿捕されたタンカーが示…
  • 7
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 8
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 9
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 10
    トイレ練習中の2歳の娘が「被疑者」に...検察官の女…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中