最新記事

英国

EU離脱を問う英国民投票、大手銀は選挙期間の意見表明手控えか

EU離脱に異を唱えていた銀行業界だが、投票が近づくにつれ党派性を隠す方向に

2016年4月7日(木)19時51分

4月5日、英国では、EU離脱の是非を問う国民投票の正式な選挙期間にまもなく入るが、大手銀行はルール違反を恐れて意見表明を控えるだろう。写真はロンドンの地下鉄バンク駅。3月撮影(2016年 ロイター/Toby Melville)

 英国では、欧州連合(EU)離脱の是非を問う国民投票が実施される6月23日まで残り10週間となる今月15日に正式な選挙期間に入り、企業に対して政治的な発言に一定のルールが課せられる。これに伴って、大手銀行はルール違反を恐れて国民投票については賛否を含めて意見表明を控えるだろう。

 現行のルールでは、国民投票をめぐる政治活動を行う企業として正式登録すれば結果に影響を及ぼすために最大で70万ポンドの支出が認められる。しかし登録していない企業は、こうした支出は1万ポンド以下に制限される。違反すれば制裁金支払いを命じられたり、関係した従業員が投獄されかねない。

 今のところ政治活動登録している企業は13社しかなく、大手銀行は1つも入っていない。大手行の多くはこれまで、EU離脱は自分たちの事業に打撃を与えかねないとして、残留支持を声高に唱えていたにもかかわらずだ。

 ゴールドマン・サックスやJPモルガンといった有力投資銀行は既に、EU残留支持運動に多額の献金をしている。しかし事情に詳しい関係者によると、足元ではずっと慎重な戦略を練っているところだという。

 法律事務所ホーガン・ロベルスのパートナーで英国とEUの公法専門家のチャールズ・ブラステッド氏は、銀行は過去の選挙でも意図しない形で党派性を持ってしまわないように対外発信に気を使ってきたが、国民投票はより細心な姿勢が求められると指摘。「政治運動の正式登録をしていなくても、自らの行為の性質によってはそのつもりがなくともどちらかに肩入れする政治運動と定義されるリスクがある」と述べた。

 その上で、今回の国民投票は数年で考えを変えられる総選挙よりもずっと大きな問題なので、企業としてもルール順守に万全を期すことを重視する姿勢は普段よりも強いとの見方を示した。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ米大統領、29日に議会指導部と会談へ 予算

ワールド

トランプ米大統領、ポートランドへの派兵指示 「移民

ワールド

国連、対イラン制裁を再発動 イランは厳しい対応を警

ワールド

ロシア外相が西側に警告 「いかなる攻撃にも断固とし
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ハーバードが学ぶ日本企業
特集:ハーバードが学ぶ日本企業
2025年9月30日号(9/24発売)

トヨタ、楽天、総合商社、虎屋......名門経営大学院が日本企業を重視する理由

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び出した父親が見つけた「犯人の正体」にSNS爆笑
  • 2
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国はどこ?
  • 3
    こんな場面は子連れ客に気をつかうべき! 母親が「怒りの動画」投稿も...「わがまま」と批判の声
  • 4
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 5
    高校アメフトの試合中に「あまりに悪質なプレー」...…
  • 6
    「戻れピカチュウ!」トルコでの反体制デモで警官隊…
  • 7
    国立西洋美術館「オルセー美術館所蔵 印象派―室内を…
  • 8
    「逃げて」「吐き気が...」 キッチンで「不気味すぎ…
  • 9
    「不気味すぎる...」メキシコの海で「最恐の捕食者」…
  • 10
    日本の小説が世界で爆売れし、英米の文学賞を席巻...…
  • 1
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 2
    日本の小説が世界で爆売れし、英米の文学賞を席巻...「文学界の異変」が起きた本当の理由
  • 3
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び出した父親が見つけた「犯人の正体」にSNS爆笑
  • 4
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国…
  • 5
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 6
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 7
    筋肉はマシンでは育たない...器械に頼らぬ者だけがた…
  • 8
    コーチとグッチで明暗 Z世代が変える高級ブランド市…
  • 9
    こんな場面は子連れ客に気をつかうべき! 母親が「怒…
  • 10
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 8
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 9
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中