最新記事

英国

EU離脱を問う英国民投票、大手銀は選挙期間の意見表明手控えか

2016年4月7日(木)19時51分

 保守党の元閣僚で長年のユーロ懐疑派であるジョン・レッドウッド氏はロイターに対して「企業や資金のある国民が選挙にそれを使えるかに関しては明確なルールが存在し、彼らは従わなければならない。この法律は非常にはっきりしたもので、相当十分な根拠に基づいて策定されている」と話した。

 主要業界団体の英国銀行協会(BBA)は、メンバーの銀行と接触し、選挙期間中の公的な対外発信のやり方を定めたルールの存在をあらためて強調している。ロイターがBBAの考え方が記された電子メールのコピーを入手した。

 BBAは、国民投票に関する調査リポートや会議、夕食会、討論会、世論調査、あるいは自社のサイトに国民投票関連の何らかの情報を掲載することがすべてルールに触れる恐れがあると説明した。

自粛ムード

 ロイターが取材した英国に拠点を置く有力銀行10行はいずれも、選挙ルールに関して法的な助言を受けていると回答した。一部は、社員へのアドバイスも実施している。

 バンク・オブ・アメリカの広報担当者は、幹部向けに指針を出すなどの対策を取ったことを明らかにした。他の9行は「オンレコ」のコメントを控えた。

 銀行関係者の中からは、顧客への定期的な経済調査リポートの配信までルールで禁止されることにはならないが、言い回しはおとなしめにしなければいけないかもしれないとの声が聞かれた。

 英国を拠点とするある銀行の社員は、「(企業活動を)冷え込ませる影響が出てくる。この問題には慎重に臨む方が好ましいと考える金融機関が多くなる」と語る。

 外銀の英国事務所で働く別のバンカーは「(ルールの)解釈が難しい。国民投票は通常の選挙とは異なり、より党派性が強く、双方の陣営が相手の揚げ足を取ろうとしている」とこぼした。

 昨年9月に実施されたスコットランド独立の是非を問う住民投票に比べても今回の方がずっと注目度が高い、と複数のバンカーは指摘した。大半がEU残留を望む銀行セクターにとっては6月の国民投票がもたらすリスクははるかに大きいからだ。

 (Andrew MacAskill、Anjuli Davies記者)

[ロンドン 5日 ロイター]

120x28 Reuters.gif
Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ノルウェー中銀、政策金利据え置き 年内の利下げ視野

ビジネス

アクセンチュア、AI教育のアイデミー買収へ 1株1

ビジネス

電通G、25年12月期純損益予想を赤字に修正 欧米

ビジネス

韓国、決済時間を午後8時まで延長へ 海外投資家の利
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が教える「長女症候群」からの抜け出し方
  • 3
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ「衝撃の物体」にSNS震撼、13歳の娘は答えを知っていた
  • 4
    【クイズ】アメリカで最も「盗まれた車種」が判明...…
  • 5
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 6
    マスクの7年越しの夢...テスラ初の「近未来ダイナー…
  • 7
    「ホラー映画かと...」父親のアレを顔に塗って寝てし…
  • 8
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 9
    トランプ「首都に州兵を投入する!」...ワシントンD.…
  • 10
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた「復讐の技術」とは
  • 3
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を呼びかけ ライオンのエサに
  • 4
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 5
    【クイズ】次のうち、「軍用機の保有数」で世界トッ…
  • 6
    職場のメンタル不調の9割を占める「適応障害」とは何…
  • 7
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 8
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 9
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 10
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大…
  • 8
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 9
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 10
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中