最新記事

ワークプレイス

自治の精神で育む都市のフロンティア

2016年3月18日(金)06時03分
WORKSIGHT

wsNDSM-2.jpg

NDSMには一般企業が入居できるエリアも。感性の高い若者の集まる場ということで、リクルーティングやマーケティングの観点からMTVを傘下に持つバイアコムのオフィスも入っていた。

wsNDSM-3.jpg

アムステルダムでは、家具を修復する際に大理石風の模様を施すことがある。このブースでは、ペイント職人がレクチャーを開き、市民がその技術を学んでいた。

イベントやスペース貸しで得た収益はすべてエリアに還元していく

 ここにはオランダの歴史があり、アートがあり、カルチャーがあり、ビジネスがある。これがNDSMの個性であり、新たな文化発信の場となった背景なのだろう。だがもう1つ、NDSMをユニークな場にしているものがある。「自治の精神」だ。

 オンラインプラットフォームNDSM.nlの設立は3年前。プロジェクトデベロッパーとアムステルダム市、企業、アントレプレナー、アーティストの出資からなる財団だ。かつて再開発プロジェクトに関係する団体の意見が分かれ、バラバラになりかけた。信頼関係を再構築するため、関係者全員が再開発に参加できるネットワークを作ったことが端緒となる。

 NDSM-werf財団の現在の業務はエリアのメンテナンス、イベント開催、コミュニティのファシリテートが3本柱だ。外部からの依頼で商業イベントにスペースを貸して収益を得ることもあるが、NDSM-werf財団はあくまで非営利団体。イベントの収益は、実現難度の高いクリエイティブなイベントを企画・運営することでエリアに還元する。NDSM-werf共同創立者のアン・マリー・ホーグランド氏は言う。

NDSMの未来を関係者全員のディスカッションで描いていく

「商業的なイベントとクリエイティブなアートイベントの両方が行われることで、エリアのプロフィールも高まりますし、アーティストがこのエリアに留まりやすくなる。商業とアーティストがお互いに支え合い、どちらも恩恵を受ける形で機能しています。中立的な立場である私たちだからこそ、サポートできるのです」

 そして目下の中核業務と言えるのは、エリア全ての関係者をつなぐオフライン・オンラインのコミュニケーションツールを作ることだ。この2年間、ヴァン・リエット氏とホーグランド氏は、「Self made future」プロジェクトを進めている。ともにNDSMの未来を描くためのオープンなディスカッションだ。

 オフラインのミーティングは週1回。『エリアの将来について話したければ、毎週木曜日の4時に赤いコンテナに集まる』という習慣は、コミュニティ内に完全に定着した。ディスカッションの結果は「Work on the Wharf, Laboratory NDSM-wharf:future vision 2014-2025」として出版されている。

「天気がよければ外で、悪ければ屋内で。参加したい人なら誰でも歓迎です。ここに入居しているアーティストや大企業はもちろんですが、アムステルダム市、地域の住民、ただの通りがかり、いろんな人がやってくる。だから10人しか来ない週もあれば40人を集める週もあります」(ホーグランド氏)

wsNDSM-4.jpg

様々なテキスタイルを扱う服飾系アーティストたち。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米イラン、核協議の議題や開催地巡り溝 実現に不透明

ワールド

再送米政権、ミネソタ州派遣の移民職員700人削減へ

ワールド

米財務長官、強いドル政策支持再表明 FRBは国民の

ワールド

EXCLUSIVE-ロ原油収入減で財政悪化懸念、2
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染拡大する可能性は? 感染症の専門家の見解
  • 3
    エプスタインが政権中枢の情報をプーチンに流していた? 首相の辞任にも関与していた可能性も
  • 4
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 5
    トランプ不信から中国に接近した欧州外交の誤算
  • 6
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 7
    アジアから消えるアメリカ...中国の威圧に沈黙し、同…
  • 8
    電気代が下がらない本当の理由――「窓と給湯器」で家…
  • 9
    ユキヒョウと自撮りの女性、顔をかまれ激しく襲われ…
  • 10
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「副産物」で建設業界のあの問題を解決
  • 4
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から…
  • 5
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 6
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 7
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 8
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 9
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 10
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中