最新記事

全人代

習近平政権初の五カ年計画発表――中国の苦悩にじむ全人代

2016年3月7日(月)17時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

3月5日、人民大会堂で全人代が開幕した(右が習近平国家主席、左が李克強首相) Kim Kyung-hoon- REUTERS

 5日、年一回開かれる全人代が始まり、習近平政権になってから初めての五カ年計画(2016~2020年)が発表された。政府活動報告を中心として、新五カ年計画および今年のGDP成長率(6.5~7%増)や軍事費7.6%増などを読み解く。そこには経済の低迷と徹底した構造改革には踏み切れない中国の苦悩がにじみでている。

2015年度の活動報告

 3月5日、日本時間午前9時から人民大会堂で全人代(全国人民代表大会、日本の国会に相当)が開幕し、約3000人の代表(国会議員に相当)が出席した。冒頭、李克強首相による「政府活動報告」が約2時間にわたり発表された。

【参考記事】中国の成長率は本当は何パーセントなのか?


 報告は「1.2105年の活動報告」「2.第13次五カ年計画」「3.2016年の重点活動」の3本から成り立っている。ただし、これらは会期期間(3月5日~3月15日)まで審議され、閉幕される前に投票議決して、初めて発効する。

 まずは、1番目の「2015年の活動報告」から見てみよう。概略を示す。

1.2015年における国内総生産(GDP)は67.7兆元(3月5日のレートに基づけば日本円で1180.7兆円)で、成長率は6.9%。

2.構造調整の結果、サービス業のGDP比が50.5%に上昇。消費の対GDP貢献度は66.4%。

3.新しく登記した企業数の増加率は21.6%で、毎日1.2万社が新設された。

4.現在のGDP成長率1%は、5年前の1.5%に、10年前の2.5%に相当する。

5. 過剰生産問題を改善するため過去3年において後進的な錬鉄9000万トン、セメント2.3億トンなどを淘汰した。

6.農民工など貧困層に772万棟の低所得者向け住居を提供し、バラック住宅601万棟を改築した。

7.生産現場の大事故や食品安全などを改善するため、問責制度を設けた。

8.やるべきことをやらず、やってはならないことをやる者(幹部の腐敗など)が多いため、許認可制度などを含め、取締りを強化した。

9.第12次五カ年計画(2011年3月~2016年3月)期間内における年平均のGDP成長率は7.8%で、世界第二位のGDPを維持した。

第13次五カ年計画 (2016年~2021年)――10年連続で低くなる目標値

 習近平政権になってから初めての五カ年計画が発表された。習近平政権は2023年に終わる(中国共産党総書記としては2022年が最後の年となる)。したがって、今般の五カ年計画は、実質上、習近平政権期間、唯一の習近平が国家主席として打ち出す五カ年計画となる。全文は8万字あるということなので、その骨子のみを示そう。

【参考記事】五中全会、成長優先で後回しになる国有企業改革

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、英BBCに10億ドル訴訟警告 誤解招く

ワールド

サルコジ元仏大統領を仮釈放、パリの裁判所 10月に

ワールド

シリア暫定大統領、米ホワイトハウス訪問 米政策の転

ワールド

インド首都で自動車爆発、8人死亡 世界遺産「赤い城
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一撃」は、キケの一言から生まれた
  • 2
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    コロンビアに出現した「謎の球体」はUFOか? 地球外…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    中年男性と若い女性が「スタバの限定カップ」を取り…
  • 7
    インスタントラーメンが脳に悪影響? 米研究が示す「…
  • 8
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 9
    レイ・ダリオが語る「米国経済の危険な構造」:生産…
  • 10
    「爆発の瞬間、炎の中に消えた」...UPS機墜落映像が…
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 7
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 8
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 9
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 10
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中