最新記事

米大統領選

トランプは今や共和党支持者の大半を支配し操っている

サウスカロライナ予備選ではライバル候補の票も奪い圧勝 

2016年2月22日(月)20時00分
マシュー・クーパー

人気者 暴言にもかかわらず勢いを増すトランプ Tami Chappell-REUTERS

 サウスカロライナ州予備選で勝利した不動産王ドナルド・トランプは、共和党支持者のありとあらゆる層から支持されていることを見せつけた。一度は最有力候補と言われたジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事が苦戦を強いられ、選挙戦からの撤退に追い込まれたのは、トランプがいかにこれまでの政治の様相を一変させたかの好例だ。

 予備選前、トランプには逆風もあった。メキシコとの国境に壁を作るといった移民差別発言を繰り返してきたことに関し、ローマ法王から「壁を作る者はキリスト教徒とはいえない」と「破門」を言い渡された一件では、カトリック信者の支持が離れるのではないかといわれた。サウスカロライナの知事はトランプ以外の候補を支持していたし、ライバルのジェフ・ブッシュ陣営には、兄で前大統領のジョージ・W・ブッシュが助っ人としてサウスカロライナ入りした。それでもトランプは大勝を収めた。

【参考記事】トランプ劇場は終わらない

 出口調査によると、トランプは退役軍人や高齢者の票を集め、保守的なキリスト教福音派の票も、彼らを支持基盤とする保守強硬派のテッド・クルーズ上院議員とほぼ同数で分け合った。大学教育を受けていない人、少し受けた人、学位を持っている人などの間でも、学歴を問わず多くの支持を集めた。穏健派にも保守派にも等しく人気があった。トランプが勝てなかったのは、自らを「非常に保守的」と呼ぶ有権者と富裕層、そして大学院の学位をもった層だった。

4人に3人がイスラム教徒入国禁止を支持

 これでトランプの勝ちが決まった、というわけではないが、彼は福音派が有権者の4分の1足らずと少なく(サウスカロライナでは69%が福音派)、より世俗的なニューハンプシャー州でも勝利している。10数州が党員集会・予備選を行う3月1日のスーパーチューズデーにはどちらかといえばサウスカロライナと同じく保守的で信仰心の篤い南部の州が多く、トランプにとっては豊作が期待できそうだ。共和党の大統領候補になる意気込みなのか、トランプ先週末、サウスカロライナ州予備選の勝利宣言のなかでこう言った。「さっさと片付けてしまおう」

 2番手クルーズは福音派と「非常に保守的」な層から、続くマルコ・ルビオ上院議員は、若者や高学歴の富裕層で健闘した。だが、トランプほど幅広い支持を得た候補はいない。彼は「怒れる層」だけでなく、共和党のあらゆる支持層で支配的な地位を得ている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

韓国、ウォン安への警戒強める 企画財政相「必要なら

ワールド

マクロスコープ:意気込む高市氏を悩ませる「内憂外患

ワールド

ドイツ、連邦・州のドローン防衛を統合 ベルリンに初

ビジネス

次期FRB議長は「大幅利下げを信じる人物」=トラン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    【銘柄】「日の丸造船」復権へ...国策で関連銘柄が軒…
  • 8
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 9
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 10
    9歳の娘が「一晩で別人に」...母娘が送った「地獄の…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 5
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中