最新記事

医療

ジカ熱報道の「数字」を疑え

急速に広まるジカウイルスと小頭症の関連性は不確かだが、安易に結び付けてパニックに陥るべきではない

2016年2月12日(金)17時30分
ウィル・カレス

撃退せよ 今のところはウイルスを媒介する蚊の退治が唯一の対処法 Dado Galdieri-Bloomberg/GETTY IMAGES

 ジカ熱が流行するブラジル北東部で、脳が未発達のまま生まれる小頭症の新生児の急増が伝えられている。メディアはこぞって、ジカウイルスと小頭症の間に恐ろしい関連性がありそうだと報道。しかし政府当局者やメディアが示す数字、彼らが使う用語を注意深く見ると、大騒ぎすべきではないことが分かってくる。

 先月末に発行された科学誌ネイチャーに、中南米の出生異常を監視している医療団体の報告書の抜粋が掲載された。報告書は、小頭症の新生児の急増は「おそらく積極的な検査と過剰な診断によるものだ」と結論づけた。さらにメディアがこの問題に強い関心を持ったことで「過剰診断」があおられたとし、これまでに収集されたデータだけでは、ジカ熱と小頭症のいかなる関連性も断定できないと指摘した。

 この指摘はかなり大きな意味を持つ。だが問題は過剰診断の可能性だけではない。これまでに出ている情報のいくつかを検証してみよう。

関連性が確認された例は1桁

 ブラジル保健省の先月末の発表によれば、同国内で診断された小頭症のうちジカウイルスと「関係がある」と確認されているのはわずか6例だ。

 新生児の感染の有無を調べる検査は手順が複雑で、政府は現在、似た症状が出る他のウイルスと区別できる、より簡単で安価な検査方法の確立に取り組んでいる。

ほとんどが「疑わしい症例」

 ブラジルで小頭症の新生児が4000人確認されたと報じているメディアもあるが、それは間違い。昨年10月以降、それぐらいの数の「疑わしい症例」が報告されたということだ。

 疑わしい症例とは、医師が赤ちゃんの頭部のサイズを測り、通常よりも小さいという所見を出したもの。この検査は胎児がまだ母親の子宮にいる段階で行われることが多い。だが子宮内では通常より頭が小さかった胎児も、多くは最終的に正常に成長すると専門家は言う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:ベトナム、新興国格上げ目前に海外資金流出

ワールド

アングル:メキシコ「麻薬王」拘束作戦の立役者、家族

ワールド

イラン戦争は2週目に、トランプ氏「無条件降伏」求め

ビジネス

アングル:欧州で若者向け住宅購入の新ビジネス、価格
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプのイラン攻撃
特集:トランプのイラン攻撃
2026年3月10日号(3/ 3発売)

核開発の断念を迫るトランプ政権が攻撃を開始。イランとアメリカの本格戦争は始まるのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗雲...専門家「イランの反撃はこれから」「報道と実態にズレ」
  • 2
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力空母保有国へ
  • 3
    日本の保護者は自分と同じ「大卒」の教員に敬意を示さない
  • 4
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 5
    【WBC】侍ジャパン、大谷翔平人気が引き起こした球場…
  • 6
    女性の顔にできた「ニキビ」が実は......医師が「皮…
  • 7
    大江千里が語るコロナ後のニューヨーク、生と死がリ…
  • 8
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 9
    「みんな一斉に手を挙げて...」中国の航空会社のフラ…
  • 10
    ダイヤモンドのような「ふくらはぎ」を鍛える最短ル…
  • 1
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 2
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズった理由
  • 3
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 4
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで…
  • 5
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 6
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 7
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 8
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び…
  • 9
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 10
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中