最新記事

感染症

米大陸で「ジカ熱」感染拡大の恐れ、小頭症と関連か

エボラ出血熱の流行のときと同じ薬もワクチンもない病気が急速に流行する可能性も

2016年1月27日(水)12時01分

1月25日、蚊が媒介する「ジカ熱」感染が、カナダとチリを除くアメリカ大陸諸国に拡大する可能性があると、WHOが発表した。写真はジカウイルス。米疾病対策センター提供(2016年 ロイター)

 蚊が媒介する「ジカ熱」感染が、カナダとチリを除くアメリカ大陸諸国に拡大する可能性があると、世界保健機関(WHO)が25日発表した。

 ジカ熱は先天的に頭部が小さい「小頭症」の新生児がブラジルで増加していることと関連があるとみられている。

 ジカウイルスは米国本土でまだ確認されてはいないものの、ハワイ州で小頭症の赤ちゃんを出産した女性が、ブラジルでジカウイルスに感染していたことが明らかとなった。

 ブラジル保健省は昨年11月、ジカ熱と小頭症の関連性を指摘していた。WHOによると、ブラジルは小頭症の疑いのあるケースとして3893例報告している。2010年以降で30倍以上増加しており、最も感染が拡大している地域の一つ、ペルナンブコ州では新生児の1─2%に相当する。

 西アフリカでのエボラ出血熱の流行に続き、アメリカ大陸におけるジカ熱感染拡大の可能性は、ほとんど知られていない病気がいかに急速に世界的脅威となり得るかを改めて示している。

 「薬もワクチンもない。エボラのときも同じことを言っていた。まるでデジャブだ。非常に重要なのは、できるだけ早くワクチンを開発することだ」と、オックスフォード大学のトゥルーディー・ラング教授は語る。

 商業的な見通しが不確かな熱帯病のワクチン開発に対する大手製薬会社の投資は十分とは言えず、専門家はエボラ出血熱の経験を踏まえ、インセンティブを与えるような新たな仕組み作りを訴えている。

 米国立衛生研究所(NIH)のフランシス・コリンズ所長は先週、「一度きりではなく、持続可能な解決策があると(企業が)思える計画のようなものが必要だ」と指摘する。

 現在、ブラジルのサンパウロにあるブタンタン研究所がジカ熱の研究を主導しており、ワクチンを「記録的な速さで」開発する計画だと先週明らかにした。ただし同研究所の所長は、それでも3─5年はかかるだろうとしている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=ダウ・S&P続落、FRB議長発言で9

ワールド

米、パキスタンと協定締結 石油開発で協力へ=トラン

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、FRBが金利据え置き

ビジネス

米マイクロソフト、4─6月売上高が予想上回る アジ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目にした「驚きの光景」にSNSでは爆笑と共感の嵐
  • 3
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い」国はどこ?
  • 4
    M8.8の巨大地震、カムチャツカ沖で発生...1952年以来…
  • 5
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 6
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 7
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 8
    「自衛しなさすぎ...」iPhone利用者は「詐欺に引っか…
  • 9
    街中に濁流がなだれ込む...30人以上の死者を出した中…
  • 10
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    「様子がおかしい...」ホテルの窓から見える「不安す…
  • 8
    タイ・カンボジア国境で続く衝突、両国の「軍事力の…
  • 9
    中国企業が米水源地そばの土地を取得...飲料水と国家…
  • 10
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 7
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中