最新記事

総統選挙

台湾、初の女性総統が誕生するか?――そして中国は?

2016年1月15日(金)16時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

 筆者が2014年に台湾で行なった若者の意識調査によれば、若者たちが最も嫌う国は「中国」だった。嫌う最大の原因は「イデオロギー」で、「自由と民主」を失いたくないという気持と、「自分たちは台湾人だ」という「本土意識」があるからだ。

 蔡英文氏自身は前回の総裁選において、中台の平和統一を目指す「九二コンセンサス」に反対して「台湾コンセンサス」を唱え、中台貿易に期待する経済人たちの不評を買って敗退したので、今回は「現状維持」を唱えている。しかしそれでも国民党のような北京政府寄りの精神は持っておらず、若者たちの「本土意識」に共鳴するものがある。

蔡英文氏の訪米&訪日は台湾同胞に対する選挙活動

 蔡英文氏は2015年5月末にアメリカを訪問し、10月6日には日本を訪問しているが、これらは蔡政権誕生後の挨拶まわりという意味も多少あるが、実態は在日および在米の台湾同胞に対する選挙活動だったと、在米台湾人が教えてくれた。

 そのため今年に入ると多くの在米台湾人が里帰りをしているが、16日の投票を済ませたら、すぐにアメリカに戻るのだと言っている。

 ただ、今回は蔡英文氏が当選するだろうことがほぼ確実なので、それほど何が何でも帰国しようという人は多くなく、それがプラスに働くのかマイナスに働くのか、逆に不安だとも、もらしている。

中国大陸における報道と中国政府の思惑

 中国大陸では、総統選民意調査に関して、非常に奇妙な調査結果を報道している。

 たとえば、昨年12月28日付の「新華網」は、台湾のYahoo奇摩が3人の総統候補者演説のあとの民意調査の結果を発表したのを引用して、

蔡英文(民進党):36%
朱立倫(国民党):38%
宋楚瑜(親民党):26%

という、中国にとって「うれしい」データだけを選んで公表した。

 また北京政府管轄下の「鳳凰網」は、朱立倫が蔡英文よりも支持率が8%も上だという情報を流している。

 上記Yahoo奇摩が2016年1月2日に民意調査を行なったところ、

蔡英文(民進党):33%
朱立倫(国民党):41%
宋楚瑜(親民党):25%

で、なぜか朱立倫氏の支持率がトップだ。

 これにより逆に、いかにYahoo奇摩が北京政府寄りであるかが見えてくる。

 またアリババの馬雲が買収した香港の「南華早報」も「朱立倫:39%、蔡英文:33%」と書き立てて、喜んでいる。

 そう期待したいのだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米債市場の動き、FRBが利下げすべきとのシグナル=

ビジネス

米ISM製造業景気指数、4月48.7 関税コストで

ビジネス

米3月建設支出、0.5%減 ローン金利高騰や関税が

ワールド

ウォルツ米大統領補佐官が辞任へ=関係筋
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 7
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    【徹底解説】次の教皇は誰に?...教皇選挙(コンクラ…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中