最新記事

米中関係

訪米初日、習近平はどう迎えられたか?【習近平 in アメリカ②】

中国戦闘機が米偵察機に接近、アメリカ人女性をスパイとして拘束など、アメリカとの共存を求める習には逆風も

2015年9月25日(金)12時55分
遠藤 誉(東京福祉大学国際交流センター長)

大歓迎 ボーイングで航空機300機の購入を表明するなど、米経済界では「国賓級」の扱い Mark Ralston-REUTERS

※【習近平 in アメリカ①】習近平訪米の狙いは? はこちら
※【習近平 in アメリカ③】まれに見る「不仲」に終わった米中首脳会談 はこちら

 22日にシアトルに着いた習近平国家主席は歓迎会で講演をしたが、それに合わせたように米国防総省は9月15日の中国軍機と米軍偵察機の異常接近について発表し非難した。同時に米国女性の人権問題も浮上。中国の反応は?

まずは経済でひきつけて

 米国時間の9月22日に西海岸のワシントン州シアトルに着いた習近平国家主席は、ワシントン知事やシアトル市長などと会談し、米中両国は新たな大国関係のもと、「衝突せず」「対抗せず」「互いを尊重する」ことを原則として、協力しながら互いに発展したいと述べた。

 つぎに第3回米中知事フォーラムに参加し、アメリカ50州の40数省と姉妹関係を結んでおり、両国は地方の友好関係に頼り「人と人の支持」を重視したいと笑顔を振りまいた。

 カリフォルニア州のブラウン知事の発言を、中央テレビ局CCTVはクローズアップした(カリフォルニア州サンフランシスコ市議会が同日の22日に慰安婦像設置に関して全会一致で採決したことに関しては別途論じる)。

 夕方はワシントン州政府と友好団体が主宰したレセプションに参加しスピーチした。会場のテーブルには既に料理が並べられており、中国人とアメリカ人が交互に並ぶという座席配置になっている。長すぎるスピーチに必ずしも熱気に満ちた表情ではなかったが、CCTVでは「拍手で何度もスピーチが中断された」と報道している。

 習近平国家主席が「反腐敗運動は政治的な権力闘争でない」と強調したことが筆者には新鮮だった。

 主たるスピーチの内容は「中国は永遠に覇権を唱えず、国連憲章を中心として世界の平和的発展を願う」「中国を色眼鏡で見ないでほしい」「食い違いを乗り越えて、互いに尊重し合い、ウィン‐ウィンの関係を築きたい」「中国経済は安定成長を続けているので安心してほしい」「外国の投資環境を有利なものにし、知的所有権を守る」「中国は法治国家であり、人権を尊重する」「サイバーセキュリティの安全対策を米中両国で検討したい」など、弁明が多かった。

 これは本コラム「習近平訪米の狙い」で書いた「増信釈疑」(疑念を釈明して晴らし、信頼を増加させる)の「釈疑」の部分だが、「増信」に関しては「中国は5年後には10兆ドルの商品を米国から輸入し、対外投資は5000億ドルを超える」ことを強調することを忘れなかった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

必要なら利上げも、インフレは今年改善なく=ボウマン

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 8

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 9

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中