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FIFAが犯す6つの人権侵害

2015年6月24日(水)09時11分
ジェシカ・フィーラン

 違法行為をしていなくても、FIFAの基準によって「犯罪者」とされたケースもあった。オランダ人女性2人は、オレンジ色の服で試合観戦をしたために身柄を拘束された。FIFAの公式スポンサーではないビール会社のために「宣伝行為」をした罪に問われたのだ。

 大会期間中のみ適用された、「2010FIFAワールドカップ特別措置法」に違反したとの判断だった。これは南アの国内法を曲げてまで制定された特別法。何ともフェアプレーなことだ。

3)サッカーのためなら貧困者を邪魔者扱い 社会で最も弱い立場にある人たちを立ち退かせるのも、大会関係者の汚職疑惑と同様にW杯の「伝統」だ。

 南ア大会では、大会運営当局が、試合会場の近くにあるスラム街の住人や不法占拠者、ホームレスを強制退去させたことが批判された。観光客向けの宿泊施設を建設するため、あるいは観光客に貧困を見せないようにするためだった。ケープタウンだけでも数千人が、まるで強制収容所のような掘っ立て小屋に移ることを強いられた。

 昨年のブラジル大会の組織委員会もこの例に倣った。全国で最大25万人に立ち退きを強制。リオデジャネイロでは1万9000世帯以上が家を追われ、市内最古の貧民街ファベーラがいくつも解体されたという。

4)デモ隊への弾圧 W杯開催に反対するデモ隊は、FIFA本部を訪れる税の取り立て人ぐらい歓迎されない存在だ。

 13年6月、ブラジルでは翌年のW杯開催や、当時開催中だったコンフェデレーションズカップに掛かる巨額の費用などをめぐり、国民から不満の声が上がり始めた。

 当局の対応は素早かった。国際人権団体アムネスティ・インターナショナルによれば、デモ隊を取り締まるために警察は無差別に催涙ガスを発射。ゴム弾の使用や、警棒による殴打もあった。この厳し過ぎる取り締まりで出たけが人は数百人。さらに数百人が身柄を拘束された。デモ隊は武器も持たず、平和的な抗議活動を行っていただけだ。

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