最新記事

韓国

朝鮮半島38度線が「平和の公園」に?

イメージ回復を狙う朴政権が南北の軍事境界線に「平和公園」の建設を提案

2014年12月1日(月)12時19分
ジェフリー・ケイン

自然も豊か 人が足を踏み入れなかったおかげで軍事境界線は貴重な野生動物の故郷に Hyungwon Kang-Reuters

 アメリカのビル・クリントン元大統領に言わせれば、ここは「地球上で最も恐ろしい場所」だ。何しろ「非武装地帯(DMZ)」のはずなのに、重武装した上で、にらみ合いが続いている。

 朝鮮半島を南北に分断する軍事境界線は、朝鮮戦争(1950〜53年)の負の遺産。200万人以上の市民が犠牲になったあの戦争を思い起こさせる。南北朝鮮の間に和平条約は結ばれていないから、両国は今も「休戦」状態にある。

 DMZは軍事境界線の南北に2キロずつの幅4キロの地域だ。地雷が埋められ、北から南へ掘られた4本のトンネル(今は観光名所だ)が発見されたこの場所では、時々銃撃戦が起こる。

 DMZにある板門店は、韓国軍中心の国連軍と北朝鮮軍による共同警備区域(JSA)。旧ソ連式の茶色い軍服を着た北の兵士と、迷彩服やパイロット服の南の兵士が対峙する。

 14年10月19日にはDMZ北西部で、境界線に接近した北朝鮮兵に対し、韓国側が警告射撃を行った。その前の10日には、韓国の活動家が飛ばした金正恩(キム・ジョンウン)体制を批判する印刷物を運ぶ風船に北朝鮮が発砲した。

 そんなDMZのイメージを、韓国が変えようとしている。この地域は動植物の種類が豊かで、風景も美しい。そこで、この地域が南北の橋渡しになる可能性をアピールしようというのだ。

 DMZは世界屈指の危険な国境地帯だが、域内の沼や草原に人の手はほとんど入っていない。絶滅危惧種のツルや、シベリアトラ、ツキノワグマなどもすみ着いている。

 さまざまな事件や不祥事が続く国のイメージを回復させたい韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領は、「信頼外交」と呼ぶ南北の雪解け戦略の一環として、DMZに「平和公園」を建設しようとしている。

「非武装地帯を平和の象徴にすることで、私たちは戦いと争いの記憶を拭い去ることができる」と、朴は8月に語った。「信頼と協力、そして統一を、朝鮮半島にもたらせるだろう」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

焦点:闇に隠れるパイロットの精神疾患、操縦免許剥奪

ビジネス

ソフトバンクG、米デジタルインフラ投資企業「デジタ

ビジネス

ネットフリックスのワーナー買収、ハリウッドの労組が

ワールド

米、B型肝炎ワクチンの出生時接種推奨を撤回 ケネデ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 5
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 6
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 7
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 8
    三船敏郎から岡田准一へ――「デスゲーム」にまで宿る…
  • 9
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 10
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 7
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 8
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中