最新記事

領土問題

中国の国防専門家「第3次世界大戦に備えろ」

南シナ海と東シナ海における領有権問題が戦争にエスカレートする可能性が高いと国防大の教授が予想

2014年9月18日(木)16時00分
ミシェル・フロルクルス

くすぶる火種 フィリピンと領有権を争う南沙諸島のセカンド・トーマス礁に現われた中国の海洋監視船 Erik De Castro-Reuters

 第3次世界大戦は起こり得る──中国国防大学の教授がそう予言し、中国はそれに備えるべきだと主張している。韓旭東(ハン・シュイトン)教授は共産党機関誌人民日報系のタブロイド紙「環球時報」に寄稿した論説で、多くの国々が「新たな形態の地球規模の戦争の時代」に突入しつつあると論じた。

 これまで紛争の対象にならなかった宇宙とサイバースペース及び海洋の領有権をめぐって、各国がしのぎを削る状況になっていると、韓は論じている。こうした紛争には「未曾有の数の国々が絡んでいる」という。

 いま揉めている海洋の領有権問題は最終的には世界大戦にエスカレートすると、韓は指摘する。「世界中の海域における領有権問題を見ると、北極海、太平洋、インド洋における覇権争いが最も熾烈だ。海洋権をめぐって第3次世界大戦が起きる可能性は大いにある」

 中国は目下、海洋の領有権問題で複数の国々と揉めている。特に南シナ海では、中国が領有権を主張する海域に対して、ベトナム、フィリピン、ブルネイ、台湾、マレーシアもぞれぞれ領有権を主張している。東シナ海では、中国は周辺に豊富な資源が眠る尖閣諸島(中国名・釣魚島)を固有の領土と主張。一方、日本はこの島々が自国の領海内にあるとしている。

 尖閣諸島などで軍事的プレゼンスを高め、政治的レトリックをもてあそぶなど、このところ中国は強硬姿勢を強める一方だ。そうした姿勢を見て、中国は海洋上の覇権拡大のためには軍事力の行使も辞さないだろうと、一部のオブザーバーは予測している。

「海洋での権益争いの激化に伴い、中国は領土権の防衛から領海権の防衛へと重点をシフトして、軍備拡大を進めるべき状況になっている」と、韓は訴える。さらに、アジア太平洋地域へと軸足を移しつつあるアメリカをはじめ、軍事大国が中国を「守勢に追いやる」可能性があるとして、それを防ぐために「強大な軍事力」が必要だとも述べている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン、イスラエルへの報復ないと示唆 戦火の拡大回

ワールド

「イスラエルとの関連証明されず」とイラン外相、19

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、5週間ぶりに増加=ベー

ビジネス

日銀の利上げ、慎重に進めるべき=IMF日本担当
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 4

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32…

  • 5

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 8

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    ネット時代の子供の間で広がっている「ポップコーン…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 9

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中