最新記事

サッカー

ヘディングが子供の脳を壊す?

2014年4月24日(木)12時46分
ステファン・ファチス

 たいていの子供は正しい姿勢を取れないし、仮にできたとしても、強い衝撃を吸収できるほど首の筋肉が強くない。しかも子供は大人と比べて、身長に対する頭部の比率が大きい。頭でっかちな体形だと、頭部が衝撃を受けたときに頭蓋骨内で脳が揺さぶられやすくなる。

 そのためカントゥは、14歳未満の子供のヘディングを禁じるべきと考えている。これはヘディングそのものの危険性だけでなく、ヘディングの際に他の選手の頭部や肘と接触したり、頭から地面に落ちるリスクも懸念しているため。実際、オハイオ州立大学などの研究チームが高校生男女のサッカー選手を対象に行った07年の調査では、プレー中の脳震盪(のうしんとう)の多くは他の選手との接触が原因だった。

後手に回るサッカー界

 サッカー中の脳震盪が重大なリスクであることに疑いの余地はない。オハイオ州で各種スポーツに取り組む高校生選手を調べたところ、試合と練習10万回における脳震盪の発生件数が一番多いのは、アメフトの47回。2位は女子サッカーで36回、3位は男子サッカーの22回だった。

 テキサス大学ヒューストン保健科学センターの研究者は昨年、高校サッカーの女子選手らの刺激への反応速度を練習直後に測定した。練習中に2〜20回ヘディングをした選手は、していない選手よりやや反応が遅かった。「ヘディング後に重大な認知的変化があったことの表れだ」と、研究者らは記している。

 英インペリアル・カレッジの研究でも、平均的なヘディングで頭部にかかる力は、アマチュアボクサーのパンチに相当するとの結果が出ている。

 もっとも、ヘディングの危険を示唆する科学者の間でも、ヘディングが脳に長期的な影響を及ぼすと結論付けるのは早計だとの意見が強い。ヘディングと脳損傷に相関関係はないとする研究も存在する。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:「豪華装備」競う中国EVメーカー、西側と

ビジネス

NY外為市場=ドルが158円台乗せ、日銀の現状維持

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型グロース株高い

ビジネス

米PCE価格指数、インフレ率の緩やかな上昇示す 個
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 4

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 5

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 6

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 7

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 8

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中