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ヘディングが子供の脳を壊す?

2014年4月24日(木)12時46分
ステファン・ファチス

 科学的に明確な答えが出ていない以上、ヘディングを不可欠な要素だと考えるサッカー界が方針を一変させることはないだろう。子供や中高生向けのサッカーリーグもほとんど対策を取ってこなかった。

 10年以上前にもヘディングと脳損傷の関係が騒がれたことがあったが、全米青少年サッカー協会は10歳未満の子供のヘディングを禁じる提案を却下した。ただし最近は「10歳未満のヘディングを推奨しない」「コーチはヘディングを教えたり練習させるべきでない」との方針を打ち出して警鐘を鳴らしている。

 私の娘が所属するワシントンのサッカーリーグも同様の方針を掲げているが、コーチや保護者には周知されていない。コーチ陣はヘディングを重要なサッカー技術と信じて指導に精を出す。子供たちは面白そうだからといってヘディング練習に励み、親たちは十分な知識がないまま傍観している。

 ヘディングに関する研究が多いオランダの神経心理学者エリク・マツァーはニューヨーク・タイムズで、17歳未満の選手は練習中にヘディングをすべきでないと訴えた。「ヘディングが子供にとって安全だと断言するには、もっと多くの研究が必要だ」と、マツァーは言う。「私たちはカミソリの刃の上を歩くような危険を冒している」

 マツァーがこう語ったのは、グレンジの死が話題になった今年2月ではなく01年のこと。10年以上たっても私たちはまだ、カミソリの刃の上を歩いている。

© 2014, Slate

[2014年4月 1日号掲載]

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