最新記事

ウクライナ

ロシア介入で緊張する中東欧事情

欧州で紛争勃発か? ポーランドは強い姿勢で臨み、チェコは身を引く

2014年3月4日(火)15時21分
ジェーソン・オーバードーフ

手を引いて! EU外相理事会が行われたブリュッセルでは、ロシア軍介入に抗議の声が上がった Yves Herman-Reuters

 ロシア系住民の保護を理由に、ウクライナのクリミア半島に軍を投入したロシア。中欧の政治指導者たちはこれを激しく非難し、戦争が勃発するのではと不安に思う国民を安心させようとしている。

「ヨーロッパは間違いなく、ベルリンの壁崩壊以来で最大の危機に直面している」と、ドイツのフランクワルター・シュタインマイヤー外相は3日に開かれたEUの緊急外相理事会で述べた。「ヨーロッパが新たに分裂する危険がある。ウクライナ情勢は日ごとに緊張が高まっている」

 先週末には、ドイツのアンゲラ・メルケル首相とロシアのウラジーミル・プーチン大統領の間で、緊迫した電話会談が行われた。メルケルの広報担当によればメルケルはプーチンに対してはっきりと、ウクライナ侵攻は国際法に違反するものであり、軍事介入は「容認できない」と伝えた。

 しかしこうした厳しい言葉とは裏腹に、ドイツは具体的な行動についてはほとんど言明しなかった。ロシアも参加する欧州安保協力機構(OSCE)などが連絡グループを作り、ウクライナ東部とクリミアに事実調査団を派遣することを提案しただけだ。

 ウクライナと国境を接するポーランドのドナルド・トゥスク首相は、アメリカとその欧州同盟国は、ウクライナ危機がより広範な地域紛争に発展するのを阻止すべきだと主張。ドイツよりも強い決意を表明した。「歴史的な比較をし過ぎるのはよくない。しかし歴史が教えるように、平和を守るために絶えず譲歩する者は、単なる時間稼ぎをしているにすぎない」。

 トゥスクは、1938年にアドルフ・ヒトラー率いるドイツがチェコスロバキアのズデーテン地方を併合することを欧州列強が認めた過去を引き合いに出した。

欧州の株式市場は大幅に下落して

 そんななかポーランドでは部隊が移動しており、インターネット上では、ウクライナ国境の守備を強化するのではという憶測が流れている。しかしポーランド軍の広報担当は、部隊移動は「ウクライナでの出来事とはまったく関係がない」と語っている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日銀の情報発信、利上げ判断につながる変化 円安を警

ワールド

米感謝祭休暇の航空需要が縮小、政府閉鎖が影響

ワールド

NZ中銀が0.25%利下げ、景気認識改善 緩和終了

ワールド

アングル:ケネディ暗殺文書「押収」の舞台裏、国家情
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    放置されていた、恐竜の「ゲロ」の化石...そこに眠っ…
  • 8
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 10
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 8
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中