最新記事

北朝鮮

ナンバー2粛清を招いた中国ファクター

張成沢の処刑後も、北朝鮮当局は中国で事業を行う張ゆかりの北朝鮮人を本国に呼び戻しているという

2013年12月17日(火)17時57分
ミシェル・フロクルス

権力の代償 死刑判決を下された後、連行される張成沢(12月12日) Yonhap-Reuters

 先週、金正恩(キム・ジョンウン)第1書記の叔父で後見人とされてきた張成沢(チャン・ソンテク)国防委員会副委員長が粛清されたというニュースは、世界に大きな衝撃と波紋をもたらした。

 北朝鮮ウォッチャーの間では、張の処刑をめぐるさまざまな臆測が飛び交っているが、信憑性のある説の一つは、張が築いた中国との強いパイプがあだになったというもの。北朝鮮と中国は経済的にも政治的にも強い同盟関係にあるが、金正恩体制における実質上のナンバー2と見なされてきた張はとりわけ中国のビジネス界と関係が深いことで知られていた。

 金正日(キム・ジョンイル)政権時代に築いた人脈を土台に、極貧にあえぐ北朝鮮との貿易を増強したがっている人々の間で高く支持された。この強いパイプが金体制に危険視され、結果的に張の粛清を招いたのかもしれない。

北朝鮮の資源を安売り

 張を全役職から解任するとした当局の発表には、「国の貴重な資源を安く売り渡す売国行為を行い、国家の財政管理システムに大きな混乱をもたらした」と記されている。これは、張が中国に鉄を安く売り渡していたことを指しているとの見方が広がっている。「ごくシンプルで現実的な理由として考えられるのは、張の力が大きくなり過ぎたということだ」と、リスクコンサルティング会社コントロール・リスクス・グループのクリス・トレンズは言う。

 目をつけられたのは張だけではないかもしれない。北朝鮮当局は先ごろ、中国で事業を行う北朝鮮人たちに帰国を命じたとの情報もある。韓国の聯合ニュースによれば、帰国命令は張と「関係していた」とみられる者を対象にしたものだという。

 中国は、粛清について控えめな姿勢を保っている。同国の王毅(ワン・イー)外相は一連の動きは「重要な変化」であり、張の粛清は「北朝鮮内部の問題だ」としている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米大統領が要請なら、FRB議長職引き受けへ 現時点

ワールド

イスラエル首相、ローマ教皇と電話会談 ガザの教会攻

ワールド

ブラジル前大統領宅を捜索 最高裁令状、米逃亡懸念か

ビジネス

米金利、今後12カ月で「かなり」低下する可能性=シ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは「ゆったり系」がトレンドに
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    「どの面下げて...?」ディズニーランドで遊ぶバンス…
  • 5
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 6
    「二次制裁」措置により「ロシアと取引継続なら大打…
  • 7
    「異常な出生率...」先進国なのになぜ? イスラエル…
  • 8
    アフリカ出身のフランス人歌手「アヤ・ナカムラ」が…
  • 9
    「想像を絶する」現場から救出された164匹のシュナウ…
  • 10
    セーターから自動車まで「すべての業界」に影響? 日…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 8
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 9
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中