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虐殺

「幽霊国家」が崩壊? 中央アフリカの異常事態

2013年12月11日(水)17時03分
トリスタン・マコネル

国民10人に1人が避難民

 国連のヤン・エリアソン副事務総長は先週、この国は「私たちの目の前で全面的な混沌状態」に陥りつつあり、「大規模な残虐行為」が起きていると警鐘を鳴らした。

「国民は想像を絶する苦難を耐え忍んでいる」と、エリアソンは現地調査団の報告を踏まえて語った。「少年兵の増加や性的暴行の拡大。各地で略奪や違法な検問、恐喝、逮捕、監禁、拷問、処刑が報告されている」
調査報告書には、セレカに対抗するために組織されたキリスト教徒の自警団による蛮行もいくつか記録されている。

 セレカ系の武装集団はキリスト教徒の村々を襲撃して女性をレイプし、子供や男性を殺害し、殴打して縛ったまま川へ投げ込んだりしている。住宅や商店は火を放たれ、商品などが略奪されている。役所の建物内部も荒らされ、書類が燃やされている。国連によれば、既に人口の10%近くに相当する推定40万人が国内避難民となっている。

 特に荒れているのは北西部だ。首都から北へ300キロほどのボサンゴアにあるカトリック教会の周囲には、3万人以上のキリスト教徒が避難している。そして町の反対側にあるイスラム教の学校の前にもイスラム教徒数百人が身を寄せている。このままだと無差別の殺戮が始まりかねない。「地域社会間の調和が恐怖に取って代わられた」と、エリアソンは言う。

 統治と治安の空白に国外のテロ組織が付け込んで勢力を伸ばす恐れもある。既にウガンダの凶暴な武装集団「神の抵抗軍(LRA)」が拠点を築いたとされ、ナイジェリアやスーダン、マリのイスラム過激派も国境を越えようとしていると、フランスや国連は指摘している。

From GlobalPost.com特約

[2013年12月10日号掲載]

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