最新記事

国際問題

アフリカ人差別丸出し韓国たばこ驚きの広告

チンパンジーで黒人をイメージさせた絵柄に非難続出

2013年11月7日(木)16時50分
パラシュ・ゴシュ

侮辱的 悪気はなかった、という韓国たばこ最大手KT&Gの本社 Lee Jae-Won-Reuters

 韓国で驚きの広告キャンペーンが物議を醸している。広告主は年間20億ドル以上の売上高を誇る韓国たばこ最大手のKT&G(旧韓国たばこ人参公社)。新銘柄「This Africa(ディス・アフリカ)」の広告で、アフリカ人をチンパンジーに見立てた絵を用いたのだ。服を着たチンパンジーに、キャッチコピーは「アフリカが来る!」。

 アフリカを前面に押し出したのは、この新商品にアフリカ産のタバコの葉を用いているから。パッケージにはタバコの葉をあぶるサルが描かれ、この銘柄は韓国全土のコンビニに置かれている。「KT&Gの絵柄は侮辱的で、気分を害さずにはいられない」と、たばこ規制団体「アフリカ・タバコ規制同盟(ATCA)」は広告中止を求めた。「アフリカをこけにしながら、死をもたらし得る商品を売り込むとは言語道断だ」

 ATCAに言わせれば、KT&Gがアフリカのイメージを悪用するのは、文化的な鈍感さの表れだ。「もっと悪く言えばアフリカが何十年も直面してきた迫害と搾取の新たな形を意味する。韓国国民に死を売るような商品に、アフリカの名を使われたくはない」

 国際機関で働く韓国人高官は、匿名を条件に英字紙コリア・タイムズにこう語った。「奴隷貿易時代のアフリカ大陸の歴史について基本的知識があれば、ヨーロッパの植民地主義者がどのように差別を正当化していたかを知っているはずだ」。「アフリカの人々をサル並みの知性と能力しかない人間以下の存在と見なしていたのだ。韓国人は自国の歴史や文化が他国から少しでも軽視されるとすぐに憤るのに、アフリカ人は憤らないと思うのは身勝手な話だ」

根深い黒人への差別感情

 こうした抗議を受け、KT&Gは広告を10月いっぱいで中止すると発表。事態を「遺憾」だとし、「人種差別的だという懸念を払拭したい」と釈明した。「私たちは誰かを傷つけるつもりはなかった。サルを選んだのはアフリカ人を思わせる楽しい動物だから。この商品はアフリカの伝統的なロースト製法で乾燥させたタバコの葉を含むので、アフリカの自然を象徴するイメージを採用しようとしただけ」

 広報担当者によると、広告のデザイン過程にはイギリスのグラフィックデザイナーも参加していたという。しかし「誰も人種差別的だとは考えなかったため、批判は予想外だった」という。今のところ、箱の絵柄を変更する予定はない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

フォード、アマゾンで中古車販売開始 現代自に続き2

ワールド

トランプ氏、メキシコ・コロンビアへの麻薬対策強化支

ビジネス

午前の日経平均は大幅続落、一時1200円超安 ハイ

ワールド

国連安保理、トランプ氏のガザ計画支持する米決議案を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 3
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地「芦屋・六麓荘」でいま何が起こっているか
  • 4
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 7
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 8
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    経営・管理ビザの値上げで、中国人の「日本夢」が消…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 10
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中