最新記事

未来都市

過密国家に地下活用の大構想

繁栄を続けるシンガポール最大のボトルネックを解消するには地下に潜るしかない?

2013年10月10日(木)14時48分
ジョナサン・デハート

超過密 高層ビルは既に建設し尽くした Edgar Su-Reuters

 都市国家シンガポールで、地下空間の活用について議論が高まっている。国土の狭いシンガポールで、現在540万の人口が30年には690万に膨れ上がる可能性があるからだ。

「690万人だろうと何百万人だろうと、この国にはいつもスペースの問題がついて回る」と、南洋理工大学の地下空間の専門家チャオ・ツィーイエは言う。「地下空間の活用はシンガポールにとって大きな選択肢だ」

 地下活用の議論が始まったのは4年ほど前だが、メディアが大きく取り上げるようになったのはごく最近だ。この壮大な構想を唱えているコー国家開発相は、地下空間が活用されているカナダや日本の例をよく持ち出している。

 だがシンガポールの地下には、既に全長約12キロの高速道路と80キロの鉄道路線が走っている。そこへ、ショッピングモールや広場、歩道、自転車専用道路までが加わる。約40年分のゴミを収容できる処理場や原油の貯蔵施設まで建設する計画もある。

 計画が完了すれば、南西部にある人工島のジュロン島には東南アジア初の地下原油貯蔵施設が生まれ、その分地上には60万平方メートルの土地に別の施設を建設できる。

 地下科学研究都市の建設は可能かどうかという議論も盛んに行われてきた。深さ約25メートル、総面積約19万2000平方メートルの空間を地下に造り、データセンターや研究開発施設を建設して、約4200人の専門家が研究を行えるようにするという。突拍子もない話にも聞こえるが、昨年11月に行われた調査では決して不可能ではないことが分かっている。

 それでも障害は残っている。まず費用の問題。地下に建物を建設するには、地上に建設する場合の4倍以上の費用が掛かる。ジュロン島に計画中の原油貯蔵施設が完成するまでには、約9億5000万米ドルが必要だ。

 計画に疑問を持つ市民もいる。「どうして地下に行くのかね」と、元教師のデービッド・オングは言う。「土に返るのは死んだ者だけじゃないか」

From the-diplomat.com

[2013年10月 8日号掲載]

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

韓国年金基金、為替ヘッジ比率を長期的に引き上げへ 

ワールド

アングル:戦火のベイルートを走る料理配達員、市民の

ビジネス

東ガス、発行済株式の9.7%の自社株消却 4月24

ビジネス

米オープンAI、100億ドル追加調達へ 企業価値8
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆保険」を達成した中国の医療保険の実態とは
  • 2
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」モナコ舞踏会に見る富と慈善
  • 3
    【クイズ】2年連続で「世界幸福度ランキング」で最下位になった国はどこ?
  • 4
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 5
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店…
  • 6
    意外と「プリンス枠」が空いていて...山崎育三郎が「…
  • 7
    スペイン王室、王妃と王女の装いに見る「母から娘」…
  • 8
    「有事の金」が下がる逆説 イラン戦争で市場に何が…
  • 9
    「買ったら高いじゃん?」アカデミー賞会場のゴミ箱…
  • 10
    まずサイバー軍が防空網をたたく
  • 1
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 2
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え時の装いが話題――「ファッション外交」に注目
  • 3
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が発生し既に死者も、感染源は「ナイトクラブ」
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 5
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 6
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 7
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 8
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ…
  • 9
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 10
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラ…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中