最新記事

中国

「反中」台湾出身作家vs歌舞伎町案内人<3>

2013年4月25日(木)17時50分
構成、本誌・長岡義博

leexiaomu130425_02.jpg李:中国に対してやはり一番影響力があるのは、各国の首脳。彼らが常に習近平や李克強と会談できるような環境づくりをする必要もあります。

黄:中国には人間の力で解決できない問題があります。土地というのは、800年経つと退化して生態系が崩壊し始める。中国がまさにそうで、これは人間には解決できない。8%の経済成長と環境・資源という二者択一の問題もあります。
 私と李さんの考えが違うところは、1人1人が何とかする、がんばる、ということではなく、1人1人がどうしても社会の仕組みに影響されるというところです。昔の言い方をすると運命、あるいは文化と文明の仕組みということになりますが。まあ、それぞれ個人の考えの違いはあっていいと思いますけど。

――いったん中国が崩壊して、ばらばらになった中国と台湾、日本などアジア圏が現在のEUのように再構築されることについてはどう考えますか。

李:私も中国はいったん崩壊してほしい。ただそれを習近平に望んでも実現できないので、日本と台湾の力が必要。各地で天安門事件の時のようなデモが起きればそうなるが、今の中国人は安心し切って家でパソコンばかりしています。

黄:崩壊といってもいろいろな定義がありますが、歴史を見ると、中国は実は20世紀に入って何回も崩壊してきました。清朝しかり、中華民国しかり。中華人民共和国が成立したが、毛沢東の路線はその後崩壊した。今毛沢東が1万人出ても、鄧小平が10万人出ても、あるいは習近平や李克強が100万人出ても中国は変わらない。なぜか。社会の仕組みが変わらないから。中国を考える時には、生態系の問題も合わせて考えないといけない。
 中国にとって民主主義がいいかどうかは疑問です。独裁・専制がない限り中国は機能しない。民主主義や自由を許したら、中国は大変なことになる。

李:去年の反日デモは1週間しか続かなかったけど、あれが1カ月続いていたら中国は崩壊していますよ。

黄:李さんのように国外に出て「中国はこう変革して行くべきだ」と考える人が7億人を超えないと、中国は変わらないです。共産党よりも軍の中でそういう人が増えないと。

李:私は楽観的に見ています。外に出て客観的に中国を見る人が少しずつ増えることで、10年以内に天安門事件のようなことが再発すると考えています。

黄:社会の仕組みを変えない限り、1人の力で変えられることは限界がある。中国は一般的な改革では無理。革命しても元に戻る。
 日本は縄文、平安時代や江戸時代に平和な社会を築いたが、それは日本独自のシステムがあったから。中国の一番の問題は、統一を求める点にあります。1つにする、というのは全体主義。中国は歴史的に1つにまとまることが最高で、多元的な考えを認めない傾向がある。そこに中国の問題があります。

李:ただ中国もあちこちで、格差や環境汚染に反対するデモや暴動が毎日のように起きている。そこから中国が変わって行く可能性もあるし、実際変わればいいと思っています。(終わり)


『日本人が絶対に理解できない中国人と韓国人』と『最強の中国メディア 微博(ウェイボー)の衝撃』

『日本人が絶対に理解できない中国人と韓国人』(黄文雄著、徳間書店)(右)、『最強の
中国メディア 微博(ウェイボー)の衝撃』(李小牧・蔡成平著、阪急コミュニケーションズ)(左)


Kou Bunyu 黄文雄(こう・ぶんゆう) 1938年台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業。明治大学大学院西洋経済史学修士。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が反響を呼び、評論家活動へ。1994年巫福文明評論賞、台湾ペンクラブ賞受賞。『日本人が知らない日本人の遺産』(青春出版社)など著書多数。近著に『日本人が絶対に理解できない中国人と韓国人』(徳間書店)がある。

Lee Xiaomu 李小牧(リー・シャム) 1960年中国湖南省生まれ。バレエダンサー、文芸紙記者、貿易会社員などを経て88年にデザインを学ぶ私費留学生として来日。歌舞伎町に魅せられ、「歌舞伎町案内人」として活動し始める。作家、レストラン『湖南菜館』プロデューサーとしても活躍。蔡成平氏との共著『最強の中国メディア 微博(ウェイボー)の衝撃』(阪急コミュニケーションズ刊)が2012年11月末に発売された。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

岸田首相、「グローバルサウスと連携」 外遊の成果強

ビジネス

アングル:閑古鳥鳴く香港の商店、観光客減と本土への

ビジネス

アングル:中国減速、高級大手は内製化 岐路に立つイ

ワールド

米、原発燃料で「脱ロシア依存」 国内生産体制整備へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表...奇妙な姿の超希少カスザメを発見、100年ぶり研究再開

  • 4

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 5

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 6

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 9

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 10

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中