最新記事

韓国

低支持率スタート朴槿恵の腹の内

前任者の李明博のように、対日強硬姿勢で人気挽回を図る可能性も

2013年3月13日(水)16時13分
ジェフリー・ケイン

独裁者の娘 父親への評価が朴槿恵の不人気につながっている Kim Hong-Ji-Reuters

 底冷えのする先月25日、韓国の首都ソウルで行われた朴槿恵(パク・クンヘ)新大統領の就任式を、南西部の都市・光州の住民は冷ややかに見詰めていた。80年に民主化デモを当時の軍事独裁政権によって武力鎮圧された光州は、今も韓国民主化運動の象徴的存在だ。朴の父、故朴正熙(パク・チョンヒ)元大統領は、光州事件で弾圧を行った全斗煥(チョン・ドゥファン)元大統領と共に韓国の軍事独裁時代を象徴する指導者である。

 朴の与党セヌリ党を支持する保守派と革新系左派が世論を二分する韓国で、「独裁者の娘」の人気は必ずしも高くない。韓国ギャラップ社が就任直前に発表した支持率は44%。通常は就任直後の新大統領が70%以上の支持を集めているこの国では、異例ともいえる低い数字だ。

 就任演説で、朴は直接父の名前こそ出さなかったものの、その政権下で実現した高度成長を指す「漢江の奇跡」を繰り返し口にした。多くの国民が朴正煕政権の経済成長の恩恵と共に、過酷な独裁を思い出しただろう。

「朴の父は情報機関をつくり、軍事独裁の基盤を築いた」と、光州事件記念墓地のガイドの1人は語る。「その娘が人気を得るのは納得できない」

 朴を擁護する意見もある。ネットの保守系サイトには、「強大な中国とソ連が存在し、北朝鮮の金日成体制と対峙していた当時は韓国にとって困難な時代だった」と、朴正熙の軍事独裁を正当化する書き込みもあった。

 低支持率の理由はほかにもある。韓国では通常、新政権発足とともに省庁再編が行われるが、今回は放送行政の一部移管をめぐって与野党協議が難航し、再編法案成立のめどが立っていない。閣僚の人選も遅れ、政権発足時に任命手続きの済んだ閣僚がゼロという異常事態になった。

 李明博(イ・ミョンバク)前大統領が政権末期に支持率回復を狙って竹島訪問を強行したことを考えれば、低支持率が今後、対日強硬姿勢につながることも十分考えられる。ただ、父の朴正煕政権への評価も時代とともに大きく変化してきた。政権の評価は歴史が決めるものだと、新大統領は意外に腹をくくっているかもしれない。

From GlobalPost.com特約

[2013年3月12日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロ石油施設の攻撃縮小巡り支援国から「シグナル」=ウ

ビジネス

金融政策は「良い位置」、二大責務間に緊張も=FRB

ビジネス

ミランFRB理事「約1%の利下げ必要」、原油高でも

ワールド

G7、エネルギー市場安定化に向けあらゆる措置を講じ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 3
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思われるドローンの攻撃を受け大炎上
  • 4
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 5
    ビートルズ解散後の波乱...「70年代のポール・マッカ…
  • 6
    ヒドラのように生き延びる...イランを支配する「革命…
  • 7
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反…
  • 8
    【銘柄】東京電力にNTT、JT...物価高とイラン情勢に…
  • 9
    イタリアに安定をもたらしたメローニが国民投票で敗…
  • 10
    アリサ・リュウの自由、アイリーン・グーの重圧
  • 1
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 2
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 3
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」モナコ舞踏会に見る富と慈善
  • 4
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 5
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 6
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 7
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 8
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終…
  • 9
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 10
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のS…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 6
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中