最新記事

日中関係

尖閣の火種に油を注ぐアメリカの「軍拡」

日本国内に対弾道ミサイルレーダーを追加配備するという米政府の発表に中国が反発

2012年9月18日(火)16時01分
エイミー・シルバースタイン

反日の怒号 北京の日本大使館前で対日戦争を訴えるデモ隊(9月16日) David Gray-Reuters

 9月17日、アメリカは弾道ミサイルを探知・追跡する高性能レーダーシステムを日本で追加配備すると発表した。場所は沖縄以外の日本南部とみられ、06年の青森県に続く2カ所目となる。

 今回、ミサイル防衛網が拡充されるのは北朝鮮のミサイル技術の脅威に対抗するため、というのが公式見解。だが、実際には中国をけん制する意図もあるという見方も根強くあり、中国側は反発している。

「表面上の焦点は北朝鮮だ」と、ミサイル防衛の専門家である米議会調査局のスティーブン・ヒルドレスはウォール・ストリート・ジャーナル紙に語った。「実際には、誰も言葉にしようとしない重要な問題、つまり中国を見据えている」

 だが、アジア歴訪の最初の訪問地として東京を訪れたレオン・パネッタ米国防長官は17日の記者会見で、新たなミサイル防衛網が中国を意図したものではないと強調。19日には中国を訪れ、次期最高指導者に内定している習近平(シー・チンピン)国家副主席と会談する予定だ。

 それでも中国人の心は穏やかでない。ニューヨーク・タイムズ紙は、尖閣諸島の領有権をめぐる日中の対立において、アメリカの決定が中国の不利に働くのではないかという複数の中国政府高官の懸念を紹介している。

「日米合同のミサイル防衛システムは、日本が尖閣諸島問題において攻撃的な立場をとり続ける後押しとなる」と、中国人民大学の時殷弘(シー・インホン)教授(国際関係論)は語っている。「そうなれば、中国に対して非常にネガティブなメッセージとなる」
 

From GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国経済工作会議、来年は財政刺激策を軸に運営 金融

ビジネス

EU理事会と欧州議会、外国直接投資の審査規則で暫定

ビジネス

スイス中銀、ゼロ金利を維持 米関税引き下げで経済見

ワールド

ノーベル平和賞のマチャド氏、「ベネズエラに賞持ち帰
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア空軍の専門家。NATO軍のプロフェッショナルな対応と大違い
  • 2
    トランプの面目丸つぶれ...タイ・カンボジアで戦線拡大、そもそもの「停戦合意」の効果にも疑問符
  • 3
    「何これ」「気持ち悪い」ソファの下で繁殖する「謎の物体」の姿にSNS震撼...驚くべき「正体」とは?
  • 4
    死者は900人超、被災者は数百万人...アジア各地を襲…
  • 5
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキン…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 8
    「正直すぎる」「私もそうだった...」初めて牡蠣を食…
  • 9
    「安全装置は全て破壊されていた...」監視役を失った…
  • 10
    イギリスは「監視」、日本は「記録」...防犯カメラの…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中