最新記事

インド

ネットが煽る民族対立で3万人が大脱走

堪りかねたインド政府は、フェイスブックやグーグルに扇動的な投稿の検閲・削除を要請したが

2012年8月23日(木)16時28分
アレクサンダー・ベサント

逃げる イスラム教徒の「襲撃」を恐れてコルカタを脱出しようとする男性 Rupak De Chowdhuri-Reuters

 インド政府は今週、数百のウェブサイトの閲覧を規制する行動に出た。民族対立と暴力の連鎖に歯止めをかけるためという。

 今回の騒動のきっかけは、7月下旬からインド北東部のアッサム州で民族対立が激化したこと。元からの住人である非イスラム住民と新しいイスラム系住民が土地の所有権を巡って衝突し、多数の死傷者が出ている。

 対立はインターネット上でもエスカレート。インド政府関係者によれば、暴行されるイスラム教徒の動画など、報復を煽るコンテンツを含むサイトは250近くに上る。さらに「都市部のイスラム教徒が北東部出身者を襲撃する」というデマも広がり、北東部出身の出稼ぎ労働者や学生3万人が大都市を脱出する騒ぎになった。

 インド政府によると、フェイスブックは扇動的な投稿を検閲・削除することに応じたが、ツイッターからの回答は今のところ「不満足なものだ」と、地元紙は報じている。

 インド政府は、削除要請に応じないサイトを訴える方針。インドの法律では、政府が対立を煽ると見なしたコンテンツの削除を求めた場合、フェイスブックやグーグルのようなサイト運営者は36時間以内に命令に従うか、さもなければ罰せられる。

 過去数十年にわたって国内メディアに影響力を行使してきたインド政府は、コントロールの効かないネットメディアに手を焼いている、とニューヨーク・タイムズは報じている。昨年もある閣僚が、フェイスブックのようなサイトにコンテンツの事前検閲をさせようとして拒否されたという。

 今回の措置も、こうした検閲努力の一環だ。ただし今回は死傷者も出ていることから、フェイスブックも求めに応じざるをえなかったとみえる。アッサム州での民族対立による死者は、先月から80人近くに上っている。

From GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

北朝鮮が固体燃料エンジンの地上燃焼実験、金総書記が

ワールド

ウクライナ大統領がUAE・カタール訪問、防衛協力で

ワールド

全米で反トランプ集会 移民政策やイラン戦争に抗議 

ワールド

米国防総省、イランで数週間にわたる地上作戦を準備=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 2
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度を決める重要な要素とは?
  • 3
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?...「単なるホラー作品とは違う」「あの大作も顔負け」
  • 4
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のS…
  • 5
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 6
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反…
  • 7
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 8
    ヒドラのように生き延びる...イランを支配する「革命…
  • 9
    ウィリアム皇太子が軍服姿で部隊訪問...「前線任務」…
  • 10
    カタール首相、偶然のカメラアングルのせいで「魔法…
  • 1
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ海峡封鎖と資源価格高騰が業績を押し上げ
  • 2
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 3
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店員も「なすすべなし」の暴走モード
  • 4
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」…
  • 5
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 6
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 7
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 8
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終…
  • 9
    【クイズ】2年連続で「世界幸福度ランキング」で最下…
  • 10
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 6
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中