最新記事

航空機事故

墜落ロシア旅客機はなぜインドネシアに?

悲劇の事故で浮き彫りになった「航空機メーカーのフロンティア」事情

2012年5月14日(月)16時42分
パトリック・ウィン

市場開拓 パリ航空ショーで飛行するロシア製旅客機「スホイ・スーパージェット100」(09年) Pascal Rossignol-Reuters

 先週、世界に衝撃を与えたロシア製旅客機「スホイ・スーパージェット(SSJ)100」の墜落事故。9日午後2時頃、デモ飛行のためインドネシアの首都ジャカルタのハリム空港を離陸したが、数十分後に消息を絶った。その後の捜索により、ジャワ島西部のサラク山で遺体や墜落機の破片などが発見された。

 乗っていたのはロシア大使館職員やインドネシアの航空会社関係者、メディア関係者など45人以上。生存者はいないとみられている。

 それにしても、なぜこのSSJ100はデモ飛行の場所にインドネシアを選んだのか。

 実は大手航空機メーカーにとって、インドネシアは世界でも指折りの成長市場。SSJ100を開発したロシアのスホイ社も、新規顧客の開拓を狙ってデモ飛行を行ったとされる。スホイ社はもともと戦闘機の製造で知られるメーカーだが、SSJ100は同社初の短・中距離用の旅客機だ。

国際空港の旅客数は急増

 世界第4位の人口を抱えるインドネシアでは、中流層の成長が著しい。さらに、多くの島々から成る島国のため、国内の移動手段として最も効率的なのは航空機だ。中流層が航空券を買えるくらいの経済力を手にしたら、需要は一気に拡大するだろう。

 既にその兆しはある。地元紙のジャカルタ・グローブによれば、ジャカルタ郊外にあるスカルノハッタ国際空港の旅客数は、01年の1200万人から昨年には5000万人に増えたという。これは、ASEAN(東南アジア諸国連合)内でもダントツの増加率だ。

 今回の墜落事故で、スホイ社は急降下を強いられるだろう。それでも、航空機を欲しがるインドネシア市場の勢いは今後も止まらなさそうだ。

From GlobalPost.com

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米「夏のブラックフライデー」、オンライン売上高が3

ワールド

オーストラリア、いかなる紛争にも事前に軍派遣の約束

ワールド

イラン外相、IAEAとの協力に前向き 査察には慎重

ワールド

金総書記がロシア外相と会談、ウクライナ紛争巡り全面
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 6
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 7
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 8
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 9
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 10
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中