最新記事

中東

シリアでエスカレートする人道への罪

「アラブの春」を暴力で潰そうとする残虐非道に国際社会の非難は高まる一方だが、アサド政権は聞く耳も持たず

2011年11月30日(水)15時18分
キャサリーン・ライオンズ

デモの陰で 女性や子供も含む多くの市民が連れ去られ、拷問され、殺されている(写真は7月、シリア中部の都市ハマ) Reuters

 自国民の拷問や殺りくを続けるシリアに重い制裁を加えるべきだ――アラブ連盟加盟国の財務相会合は今月26日、反政府運動を暴力的に潰そうとするシリア政府に対し、経済制裁を課すことを提案した。アラブ連盟はかねてから弾圧停止や監視団の受け入れを求めていたが、受諾期限である25日までにシリア政府からの回答が得られなかった。
 
 シリアに対する経済制裁の中には、政府の在外資産凍結やシリア中央銀行との取引停止、民間航空機のシリア便運行停止、政府高官の渡航禁止などが含まれるという。一方、生活必需品や国外からの市民の送金は制裁の対象外となる。

 アラブ連盟は翌日、外相会議を行いシリア制裁案を採択。加盟する22カ国・機構のうち19カ国が賛成し、直ちに発効された。

 シリアと、その大統領バシャル・アル・アサドに対してアラブ連盟がこうした行動に出るのは初めてではない。今月中旬、同連盟はシリアの加盟資格を停止したばかりだ。

犠牲者は3500人を突破

 8カ月に及ぶこれまでの反政府デモで、政府側の弾圧により犠牲となった市民の数は3500人以上に達し、そのうち子供の犠牲は250人以上とされる。拘束された人々への拷問も横行し、中には女性や子供も含まれているという。国連の調査団はシリア政府の行為を「人道に対する罪」と断定する報告書を公表。国際的な圧力は日増しに高まっている。

 だが、政府側が国際社会の非難を受け入れる様子はない。26日、シリア政府は「外国が関与したテロ行為」で犠牲になった精鋭のパイロット6人を含む22人のシリア軍兵士の遺体を埋葬したと発表。彼らの死に象徴されるように、抗議行動を先導しているのは改革を求める国民ではなくテロリストたちだ――。政府側は従来どおりの主張を繰り返している。

 その一方で、同じ日に少なくとも13人の市民が、政府軍によって殺害されたのも事実だ。

GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トランプ氏、FRB次期議長の承認に自信 民主党の支

ワールド

エプスタイン文書追加公開、ラトニック・ウォーシュ両

ワールド

再送-米ミネソタ州での移民取り締まり、停止申し立て

ワールド

移民取り締まり抗議デモ、米連邦政府は原則不介入へ=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から脱却する道筋
  • 2
    関節が弱ると人生も鈍る...健康長寿は「自重筋トレ」から生まれる
  • 3
    世界初、太陽光だけで走る完全自己充電バイク...イタリア建築家が生んだ次世代モビリティ「ソラリス」
  • 4
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 5
    中国がちらつかせる「琉球カード」の真意
  • 6
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 9
    【銘柄】「大戸屋」「木曽路」も株価が上がる...外食…
  • 10
    「着てない妻」をSNSに...ベッカム長男の豪遊投稿に…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 3
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 4
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 5
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から…
  • 6
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 7
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 8
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 9
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 10
    秋田県は生徒の学力が全国トップクラスなのに、1キロ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中