最新記事

音楽

肉食系レディー・ガガのもう一つの顔

若者から絶大な支持を集める真の理由は、孤独やコンプレックスに悩む「はみ出し者」たちにひたすら自己肯定を説くから

2011年7月11日(月)12時32分
ラミン・セトゥデ(エンターテインメント担当)

弱者の味方 過激なパフォーマンスとは裏腹に、若いファンに対し「ありのままの自分でいい」というメッセージを発し続けるレディー・ガガ Issei Kato-Reuters

 レディー・ガガはマドンナのパクリだという批判はよく耳にする。しかし本当はむしろ、人気テレビ司会者オプラ・ウィンフリーのパクリだと言うべきかもしれない。

「自分らしく自分を愛し、誇りを持って。あなたはこんなふうに生まれてきたのだから」と、オプラは25年続いたトーク番組『オプラ・ウィンフリー・ショー』の最終回でファンにこう語り掛けた......。いや違う、オプラじゃない。これはレディー・ガガが別の番組で語った言葉だった。ガガは大きな鼻と出っ歯のせいでいじめられた子供時代を告白し、「学校でいじめられると一生引きずる」と述べた。

 一部で酷評されながらも、最新アルバム『ボーン・ディス・ウェイ』が大ヒットしているのはなぜか。その理由を知りたいなら、ガガの歌声ではなくその「説教」に耳を傾けなければならない。

「私も昔は勇敢じゃなかった。今夜は不安なんて全部忘れて」と先日、ガガはオハイオ州クリーブランドでのコンサートでファンに語り掛けた。「自分が受け入れられていないような気分にさせられる相手がいたら、無視していいのよ」。ガガは「リトルモンスター」と呼ぶ自分のファンに向かって、そんな話を繰り返した。

はみ出し者の心を照らす

 オプラが中年の主婦や失業中の男性向けにやっているのと同じように、ガガは若い世代にお手軽な心の道しるべを提供している。ファンはそれを丸ごと受け入れ、ガガの言動を逐一、ツイッターでフォローする。

 クリーブランドのコンサートを見に来た22歳のファンは「ガガは私に力を与えてくれる。自傷行為や鬱や摂食障害、容姿の悩みやいじめを経験したり、同性愛者であることを公表したファンの子たちと話をしたら、みんな『ガガが力になってくれた』って言ってた」と語った。

 ガガは、はみ出し者(もしくは不器用なティーンエージャー)として生きることがどんなにつらいか、よく分かっている。少女時代、通っていたカトリック系の学校の級友たちはガガのことを変人扱いし、ごみ箱に押し込んだりした。

 ガガの友人でバンド「セミ・プレシャス・ウェポンズ」のジャスティン・トランターは言う。「(同じ学校の)女の子たちはガガに『どうしてそんなに着飾ったり、メークに時間をかけたりしてるの? あんたレズビアン?』って聞いてばかりいた」

「信じられないほどの創造力で彼女は人々の心を照らし、この不穏な時代を生き抜く力を与えている」と、友人でアーティストのヨーコ・オノは言う。そういえばガガ自身、ファンにこんなことを言ってたっけ。「誰かとつながり、その人を抱き締め、解放し、愛しなさい」と。

 おっと間違えた。こっちはオプラの発言だった。

[2011年6月15日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:米政界の私的チャット流出、トランプ氏の言

ワールド

再送-カナダはヘビー級国家、オンタリオ州首相 ブル

ワールド

北朝鮮、非核化は「夢物語」と反発 中韓首脳会談控え

ビジネス

焦点:米中貿易休戦、海外投資家の中国投資を促す効果
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 7
    必要な証拠の95%を確保していたのに...中国のスパイ…
  • 8
    海に響き渡る轟音...「5000頭のアレ」が一斉に大移動…
  • 9
    【ロシア】本当に「時代遅れの兵器」か?「冷戦の亡…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中