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アメリカ経済石油危機という名の時限爆弾
エジプト危機で世界中が思い知った事実がある。私たちがどっぷり依存している石油市場は、不測の政治動乱というリスクを常に抱えているということだ。
ただし主要産油国ではないエジプトの原油生産がストップしても大きな問題にはならないだろう。この国の原油生産量は日量70万バレルと、世界の1日の需要量約9000万バレルに比べれば微々たるもの。世界では日量400万バレルの余剰原油があるので、エジプト分はこれで賄える。
影響があるとすれば輸送面だろう。紅海と地中海を結ぶスエズ運河とスメドパイプラインで運ばれる原油は1日300万バレル。これらの輸送路が封鎖されれば原油価格の上昇はほぼ確実だ。
それでもほかの輸送路の確保が可能なことを考えれば、本当に警戒すべきなのは政治動乱の連鎖が起き、主要産油国からの供給が途絶えることだ。サウジアラビア(日量850万バレル)、クウェート(230万バレル)、イラン(370万バレル)、イラク(240万バレル)、アルジェリア(130万バレル)に原油を頼るリスクは、エジプト危機の結末にかかわらず今後も残る。
将来的なリスク回避のためにできることは2つある。油田掘削の規制を緩和して産出量を増やすこと、ガソリン税を上げて石油消費を減らすことだ。
ひるまず海洋油田の掘削を
オバマ米政権はこれらに手を付けず、代わりに15年までに100万台の電気自動車を普及させると喧伝する。だが昨年末に発売されたゼネラル・モーターズ(GM)のシボレー・ボルトの初年度見込み販売台数が2万5000台であることを考えれば、この目標は実現不可能だろう。たとえ100万台売れても、石油消費の節減量は1日4万バレルほど。アメリカの1日当たり消費量1900万バレルの0・2%だ。
その一方、オバマ政権の油田掘削規制のおかげで失われた原油産出量は12年には日量20万バレルに上るとみられる。メキシコ湾での掘削施設爆発事故に過剰反応した結果だ。掘削技術の向上で産出量の増加が見込まれるにもかかわらず、地上油田の掘削も奨励されていない。
ガソリン税は、経済回復を妨げない程度に上げることでガソリン価格の激しい変動を防ぐことができる。環境に優しい車の人気向上にもつながるだろう。
石油大手エクソンモービルの最新調査によると、30年までに世界の小型自動車台数は50%増の12億台に達する。そのほとんどがガソリン車だという。石油供給をめぐる競争がますます激化する中、石油中毒からの脱却を真剣に考えなければならない。
[2011年2月16日号掲載]