最新記事

中東

リビア、米軍事介入3つの選択肢

カダフィが反体制派を叩き潰す前にオバマは決断を。カダフィを殺すことも選択肢の一つだ

2011年3月8日(火)18時31分
トーマス・リックス(ワシントン・ポスト軍事担当記者)

反体制派にも武器を カダフィ政権はリビア東部の反体制派に対して空爆を開始した(ラスラヌーフ、3月7日) Goran Tomasevic-Reuters

 自分より賢い友人を持つ人生は素晴らしい。先週末、私は何人かの友人とリビア情勢に関して長時間議論し、アメリカが何かしなければならないと納得した。しかし、おそらくそれは飛行禁止区域の設定ではない。

 オバマ米大統領は今日にでも、ゲーツ国防長官と統合参謀本部のメンバーを集めて、こう伝えるべきだ



 リビアでできないことは言わなくていい。君たちに何ができるか言ってくれ。アメリカに残された選択肢をリストにしてくれ。それも24時間以内に。いざという時が近づいているかもしれないし、カダフィ大佐が勝利するのは見たくない。

 中東の専門家マイケル・シンが警告するように、「行動しないことも、それなりの結果を招く」。何もしなければ、反体制派を撃ち殺せば欧米は尻尾を巻いて逃げるという教訓を、アラブの独裁者たちに与えてしまう。

 その後の議論で軍参謀たちをせっつく材料として、オバマは次のような選択肢を検討すべきだ。

■選択肢1 反体制派の支援

 一番いいのは、リビアの反体制派が勝てるように後押しすること。とはいえ、実際に提供できるのは安全な通信手段や、政府軍の戦車と車両を阻止する数千発のロケット弾くらいかもしれない。

 むしろリビア東部の空港に密かにチャーター機を飛ばして物資を送り込むことはできないのか? これはすぐにでも準備しなければならない。本当なら既に行っていなければならないことだ。

■選択肢2 カダフィの拘束

 選択肢1がうまく行かなかった場合、どうすべきか。より攻撃的でリスクも高いが、直接的な行動を検討すべきだろう。特殊部隊を派遣してカダフィを拘束する。抵抗するなら殺害する。潜伏するカダフィを始末するにも、特殊部隊が脱出する際に援護するにも、熟練した空軍を配備する必要がある。これは72時間以内に準備しなければならない。

■選択肢3 飛行禁止区域の設定

 飛行禁止区域の設定は中途半端な対策なので、私は一番気に入らない。アメリカが介入したように見えるうえ、実質的な効果も期待できない。それでも行う場合、迅速かつ低リスクで実行できる方法はないか?

「飛んだら打ち落とす」という方針を掲げ、広範囲の空爆は行わずに飛んでいる戦闘機だけを攻撃すべきだという声も上がっている。これには私は懐疑的だ。ジョン・ケリー米上院議員が提案するような、「滑走路を爆撃で穴だらけにする」戦術も成功しないだろう。
穴を埋めるのは簡単だ。

 アメリカ主導で飛行禁止区域を設定すれば、それは事実上リビア国民への「約束」となる。その場合、反体制派が掌握する都市が政府軍の空爆の標的になり得るような無意味な約束であってはならない。

 しかし選択肢2を補完するためなら、飛行禁止区域を早急に設定する価値はあるかもしれない。カダフィの目くらましにはなるだろう。ただしその場合は、72時間以内に準備しなければならない。

Reprinted with permission from the "The Best Defense,", 08/03/2011. © 2011 by The Washington Post Company

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

台湾、25年GDP予測を上方修正 ハイテク輸出好調

ワールド

香港GDP、第2四半期は前年比+3.1% 通年予測

ワールド

インドネシア大統領、26年予算提出 3年以内の財政

ワールド

米政権、年間の難民受け入れ上限4万人に 南アの白人
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化してしまった女性「衝撃の写真」にSNS爆笑「伝説級の事故」
  • 4
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 5
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 6
    債務者救済かモラルハザードか 韓国50兆ウォン債務…
  • 7
    【クイズ】アメリカで最も「盗まれた車種」が判明...…
  • 8
    「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」(東京会場) …
  • 9
    「デカすぎる」「手のひらの半分以上...」新居で妊婦…
  • 10
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた「復讐の技術」とは
  • 3
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 4
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 5
    職場のメンタル不調の9割を占める「適応障害」とは何…
  • 6
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 7
    【クイズ】次のうち、「軍用機の保有数」で世界トッ…
  • 8
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 9
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 10
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失…
  • 6
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 9
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 10
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中