最新記事

テクノロジー

スマートフォン革命、トップランナーは台湾企業

市場の爆発的拡大から生まれる新たな「巨人」。その筆頭格がHTCだ

2010年11月19日(金)13時10分
ダニエル・ライオンズ(テクノロジー担当)

 グーグルの携帯電話向けOSアンドロイドの衝撃は携帯電話業界の隅々にまで広がりつつある。通信サービスや機器メーカー、ソフトウエア業界で、その恩恵を受けている企業は多い。

 アンドロイドで飛躍しそうな企業の筆頭と言えるのが台湾のスマートフォン製造大手HTCだ。早くからアンドロイドに目を付けていた同社は今年、世界の携帯電話メーカーのトップ企業と肩を並べるようになった。

 HTCの今年の売上高は年の3倍近い約100億ドルになる見込み。株価もこの1年で2倍になった。13年前に社員10人で事業を始め、他社ブランドで販売されるコンピューターの周辺機器の開発を行っていた会社とは思えない飛躍だ。

 HTCが自社ブランドの携帯端末の販売を開始したのは06年。「スマートフォンが固定電話に代わって主流になろうとしている時期にチャンスを逃したくなかった」と同社のピーター・チョウCEOは言う。

 その後、HTCはマイクロソフトの携帯向けOS「ウィンドウズモバイル」を搭載した端末メーカーとして業界トップに躍り出る。さらに08年には世界初のアンドロイド搭載スマートフォン「HTC Dream」を発売した。これは危険な賭けだった。アンドロイドはOSとしてまだ未熟だったからだ。

 だがチョウはこの賭けに勝った。今やアンドロイドを搭載した携帯電話はアップルのiPhoneを売り上げで追い抜く存在となった。アップルは今年3月に20件に上る特許侵害でHTCを提訴したが、HTCはアップルを逆提訴している(現在も係争中)。

 いま世界で売られているHTCのアンドロイド搭載端末は11機種に上る。スマートフォン市場はパソコン市場を上回る規模になるはずだ。コンピューター業界の次なる革命で同社が大きな役割を果たすことは間違いない。こうした状況を見据え、「携帯端末に特化していることがHTCの強み」だと、チョウは言う。

 チョウにとって、アンドロイドだけが携帯向けOSではない。HTCはマイクロソフトが新たに開発した携帯端末向けOSである「ウィンドウズフォン7」搭載端末をいち早く発表したメーカーの1つでもある。

 パソコン革命で新興企業だったデルが台頭したように、スマートフォンの普及に伴って新たな「巨人」が誕生する可能性がある。最近の好調ぶりを見ると、HTCは既に巨人の仲間入りを果たしたのかもしれない。

[2010年11月24日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

鉄鋼関税、2倍の50%に引き上げへ トランプ米大統

ビジネス

アングル:トランプ関税、世界主要企業の負担総額34

ワールド

トランプ米大統領、日鉄とUSスチールの「パートナー

ワールド

マスク氏、政府職を離れても「トランプ氏の側近」 退
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プーチンに、米共和党幹部やMAGA派にも対ロ強硬論が台頭
  • 3
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言ってがっかりした」
  • 4
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
  • 5
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 6
    【クイズ】生活に欠かせない「アルミニウム」...世界…
  • 7
    「これは拷問」「クマ用の回転寿司」...ローラーコー…
  • 8
    ワニにかまれた直後、警官に射殺された男性...現場と…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」時代の厳しすぎる現実
  • 3
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多い国はどこ?
  • 4
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 5
    アメリカよりもヨーロッパ...「氷の島」グリーンラン…
  • 6
    デンゼル・ワシントンを激怒させたカメラマンの「非…
  • 7
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 8
    友達と疎遠になったあなたへ...見直したい「大人の友…
  • 9
    ヘビがネコに襲い掛かり「嚙みついた瞬間」を撮影...…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 6
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中