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テクノロジースマートフォン革命、トップランナーは台湾企業
市場の爆発的拡大から生まれる新たな「巨人」。その筆頭格がHTCだ
グーグルの携帯電話向けOSアンドロイドの衝撃は携帯電話業界の隅々にまで広がりつつある。通信サービスや機器メーカー、ソフトウエア業界で、その恩恵を受けている企業は多い。
アンドロイドで飛躍しそうな企業の筆頭と言えるのが台湾のスマートフォン製造大手HTCだ。早くからアンドロイドに目を付けていた同社は今年、世界の携帯電話メーカーのトップ企業と肩を並べるようになった。
HTCの今年の売上高は年の3倍近い約100億ドルになる見込み。株価もこの1年で2倍になった。13年前に社員10人で事業を始め、他社ブランドで販売されるコンピューターの周辺機器の開発を行っていた会社とは思えない飛躍だ。
HTCが自社ブランドの携帯端末の販売を開始したのは06年。「スマートフォンが固定電話に代わって主流になろうとしている時期にチャンスを逃したくなかった」と同社のピーター・チョウCEOは言う。
その後、HTCはマイクロソフトの携帯向けOS「ウィンドウズモバイル」を搭載した端末メーカーとして業界トップに躍り出る。さらに08年には世界初のアンドロイド搭載スマートフォン「HTC Dream」を発売した。これは危険な賭けだった。アンドロイドはOSとしてまだ未熟だったからだ。
だがチョウはこの賭けに勝った。今やアンドロイドを搭載した携帯電話はアップルのiPhoneを売り上げで追い抜く存在となった。アップルは今年3月に20件に上る特許侵害でHTCを提訴したが、HTCはアップルを逆提訴している(現在も係争中)。
いま世界で売られているHTCのアンドロイド搭載端末は11機種に上る。スマートフォン市場はパソコン市場を上回る規模になるはずだ。コンピューター業界の次なる革命で同社が大きな役割を果たすことは間違いない。こうした状況を見据え、「携帯端末に特化していることがHTCの強み」だと、チョウは言う。
チョウにとって、アンドロイドだけが携帯向けOSではない。HTCはマイクロソフトが新たに開発した携帯端末向けOSである「ウィンドウズフォン7」搭載端末をいち早く発表したメーカーの1つでもある。
パソコン革命で新興企業だったデルが台頭したように、スマートフォンの普及に伴って新たな「巨人」が誕生する可能性がある。最近の好調ぶりを見ると、HTCは既に巨人の仲間入りを果たしたのかもしれない。
[2010年11月24日号掲載]





