最新記事

イラク

イラクに芽生えた主権回復への自信

自国の政府や軍に対する信頼を高めるイラク国民。これで米軍も心おきなく完全撤退を目指せる

2010年8月27日(金)15時36分
ダニエル・ストーン(ワシントン支局)

独り立ち バグダット市内の警備にあたるイラク軍兵士(7月31日) Mohammed Ameen-Reuters

 この8月は、イラク戦争を清算した月だと言えるかもしれない。先週、駐留米軍の最後の戦闘部隊がイラクから撤退した。来週火曜日、8月31日にはバラク・オバマ米大統領がホワイトハウス執務室から演説を行い、イラクにおける戦闘任務の終了や駐留米軍の今後の撤退計画について語る予定だ。
 
 イラクでは今週初めに爆破テロが相次いだが、全体的にみれば一般市民の犠牲者数は減少している。04年から米軍の訓練を受けてきたイラク軍は十分独り立ちできる状態にあると、米国防総省からお墨付きをもらっている。

 良い兆候はまだある。イラク国民が自分たちの政府と軍指導部に対する信頼を強めつつあることだ。世論調査会社ギャラップがイラク国民を対象に実施した最新のアンケート調査によれば、イラク政府・軍に対する支持率は08年から13ポイント上昇し、41%に達していた。これは、過去2年間で支持率が5ポイント低下したアメリカの指導力に対する不信感の裏返しだ。だがそれ以上に、イラク人が自国の政府と軍はもうアメリカの助けがなくてもアルカイダと戦っていけると確信したことのほうが大きいと思われる。

待たれる新政権の発足

 このようにイラク人の自信と愛国心が高まったことは、非常に重要な意味をもつ。完全撤退を目指すアメリカは、混乱状態のイラクを見捨てるのかという国際社会からの非難を恐れることなく、堂々と撤収できるからだ。

 イラクの未来にとっても明るい話だ。政府や軍がうまく機能していくには、国民からの信頼が欠かせない。こうした信頼がさらに高まれば、イラクが今後立ち向かう国境警備や国内の内紛といった諸問題に対して、より自主的に強い態度で対処していけるだろう。

 もっとも、前途洋々というわけでもない。イラクでは連立協議が難航し、3月の連邦議会選挙から5カ月以上たつ今も新政権が発足していない。新政権の誕生はいつになるのか、そしてそれはどんな政権になるのか明らかになったとき、イラク国民が本当にどれほどの変革を望んでいるのか分かるだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米SECがジェフリーズ調査、傘下ファンドの破綻自動

ビジネス

中国の安踏体育と李寧、プーマ買収検討 合意困難か=

ビジネス

訂正(発表者側の修正)東京コアCPI、11月は+2

ビジネス

英自動車生産、10月は前年比23.8%減 ジャガー
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 5
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 6
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 7
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 8
    「攻めの一着すぎ?」 国歌パフォーマンスの「強めコ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 3
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 4
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 5
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 6
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 7
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 10
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中