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中南米

チリ鉱山生存者を待つ過酷な4カ月

2010年8月25日(水)18時31分
パスカレ・ボネフォイ

 かつては貧しい作業員の家族の相手をするより株式市場の動向に目を配るのに忙しかったゴルボルネ。しかし事故が発生してからは、毎日欠かさず被害者の家族と面会。公式発表の前に必ず彼らに直接内容を伝えるとの約束を守り続けている。

 ゴルボルネはこの18日間、事故現場から離れることはほとんどなかった。8月22日に生存が確認されるまで、家族たちにあまり期待し過ぎないようにと繰り返し呼びかけていた。

 事故の2日後、救助作業によってまた落盤が発生したとき、ゴルボルネはテレビカメラの前にもかかわらず泣き出した。常に気丈に耐えてきた被害者の家族たちに、悪い手本だと逆にたしなめられてしまった。

 先週、最深部に達した穴が方向違いだったことが判明すると、期待は一気にしぼんだ。生存確認に成功する2日前には、不安と疲労といら立ちを募らせた地元の鉱山作業員たちが自分たちで現場に下りると言い張ったが、政府が制止した。

 行き詰まりかと思われた矢先、生存を知らせる大きな赤い文字が書かれた手紙がドリルの先に取り付けられているのが発見され、事態は急展開することとなった。

 奇跡の生存劇は、サンホセ鉱山を所有するサンエステバン社に世間の目を向けさせるきっかけにもなった。同社は安全基準を軽視することでしばしば作業員組合から非難されてきた。07年には、前年に起きた作業員の死亡事故が原因でサンホセ鉱山は閉鎖に追い込まれた。だがどういうわけか08年に再開。換気の改善や代替避難ルートの確保などを含む安全基準はまだ遵守されていなかった。

 これから最大で4カ月、地下深くで過酷な環境に耐える33人と同様、サンエステバン社もかつてない厳しい批判の目にさらされることだろう。

GlobalPost.com特約)

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