最新記事

米露関係

名を捨て実を取るオバマ流リセットの勝算

2010年7月2日(金)12時43分
オーウェン・マシューズ(モスクワ支局)

 オバマ米大統領とメドベージェフ露大統領の首脳会談が6月24日、ホワイトハウスで行われた。現在の米ロ関係は、95年のクリントン大統領のモスクワ訪問以来の雪解けムード。両国は今回の会談で、対イラン制裁やヨーロッパのミサイル防衛構想、NATO東方拡大の事実上の中止など、多くの重要課題で合意に達した。

 とはいえアメリカばかりが譲歩している印象が残る。ポーランドとチェコへのミサイル配備は中止。親米国のグルジアをロシアが占領していることも、ほぼ既成事実扱い。ロシア国内の集会の自由に対する締め付け強化や、服役中の石油富豪ミハイル・ホドルコフスキーの新たな裁判についても沈黙を守っている。

 ロシアは、アフガニスタンでの軍事作戦に不可欠なキルギスの米空軍基地を閉鎖させようとするのをやめた。4月には新しい戦略兵器削減条約(START)に調印。5月には(手ぬるい内容ながら)対イラン制裁に合意したが、アメリカの見返りのほうが少ない。

 アメリカがこれだけ犠牲を払うのは、永続的な真の平和という配当を手にするため。ロシアの利害をベネズエラやイラン、シリアといった「ならず者国家」でなく、欧米に近づけようというわけだ。

 24日の会談は外交よりビジネスの話題が中心だった。アメリカにしてみれば、ロシアが欧米経済に組み込まれるほど、プーチン時代の対決姿勢に逆戻りする可能性は減る。ロシアも欧米の資本とノウハウを手に入れて、瀕死の経済を立て直そうとしている。

 23日にカリフォルニア州のシリコンバレーを訪れたメドベージェフは、ロシア版シリコンバレー計画への投資を呼び掛けた。ロシア国営企業が総額40億謖相当のボーイング737型機50機を購入することも明らかになった。

 米ロの蜜月が結婚に発展すれば、ロシアにはメリットが大きい。米議会で審議中の民生用原子力協力協定はロシアに巨額の利益をもたらすし、93年以来、歴代米大統領がロシアの前にぶら下げてきた「WTO加盟」も、オバマ大統領は全面支持している。

 賭けには違いない。だがブッシュ前大統領時代の「正面衝突」政策は、ひどく逆効果だった。オバマ流のリセットは、ロシアを味方にするには一番かもしれない。

[2010年7月 7日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ大統領「独立守った」、ロ侵攻から4年 G

ワールド

米、重要鉱物価格設定にAI活用検討 国防総省開発

ビジネス

AIが雇用市場を完全に覆すことはない=ウォラーFR

ワールド

ウクライナ、ロシアの「核取得」非難を否定 英仏関与
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
2026年3月 3日号(2/25発売)

フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 3
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 4
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
  • 5
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 6
    3頭のクマがスキー客を猛追...ゲレンデで撮影された…
  • 7
    「極めて危険」──ゼレンスキー、ロシアにおける北朝…
  • 8
    IMF、日本政府に消費減税を避けるよう要請...「財政…
  • 9
    武士はロマンで戦ったわけではない...命を懸けた「損…
  • 10
    「IKEAも動いた...」ネグレクトされた子猿パンチと「…
  • 1
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 2
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 3
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 4
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
  • 5
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 6
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 7
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由.…
  • 8
    100万人が死傷、街には戦場帰りの元囚人兵...出口な…
  • 9
    ロシアに蔓延する「戦争疲れ」がプーチンの立場を揺…
  • 10
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 6
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中