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ソマリアの惨状を世界が見捨てた訳

2009年11月25日(水)16時36分
ジェイソン・マクルーア

危機を報道する人も逃げ出した

 アルシャバブはエチオピアと敵対するエリトリアから支援を受け、ソマリア南部の大半の地域を掌握。国連の肝煎りで成立した今のソマリア暫定政府は、首都の一部地域を支配しているだけだ。

 外国人が武装勢力に誘拐・殺害される事件が相次ぎ、報道関係者もソマリアを敬遠する今、メディアがこの国の窮状を取り上げることはほとんどなくなった。

 暫定政府は年間3億ドルの外国援助と平和維持部隊5万人の増派が必要だと訴えている。だが欧米諸国には、ソマリアは手の施しようがないという無力感が漂う。

「事態を収拾するには国づくりが必須だが、うまくいく保証はない」と、米外交評議会のブランウイン・ブルトンは言う。「国際社会が考えるべきはこの泥沼からどうやって手を引くかだ」

 アルカイダがソマリアに本格的な拠点を築く恐れがある限り、完全に手を引くわけにはいかないが、混乱収拾の道筋も見えない。17年前にアメリカの楽観論がこの国を混乱に陥れたとすれば、今はアメリカの悲観論がこの国を絶望の淵に捨て去ろうとしている。

[2009年9月30日号掲載]

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