最新記事

アジア

CIA、カルザイ弟に金銭提供の裏

アフガニスタン大統領の弟がCIAから金を受け取っていたとの報道が波紋を広げているが、問題は「なぜこの時期に情報がリークされたか」だ

2009年10月30日(金)17時59分
マーク・ホーゼンボール(ワシントン支局)

兄とは対照的? アフガニスタン大統領の弟アフメド・ワリ・カルザイ(左から2人目、01年)は、これまでも麻薬密輸との関わりを指摘されてきた ©Adrees Latif-Reuters

 10月28日付のニューヨーク・タイムズは、アフガニスタンのハミド・カルザイ大統領の弟で、南部カンダハル州の州議会議長を務めるアフメド・ワリ・カルザイが、CIA(米中央情報局)から何年にもわたって定期的に金を受け取っていると報じた。これはローマ法王がカトリック教徒だとか、熊にとって森は居心地がいい、というくらい当たり前のことだ。

 CIAのポール・ジミグリアーノ広報官は、「CIAはこの手の疑惑についてコメントしない」と述べた。しかし米政府筋に言わせれば、大統領の弟や周囲の関係者(たぶん何人もいるだろう)の協力に対して謝礼を払っていても、驚くべきことではないという。

 ニューヨーク・タイムズは、アフメド・ワリ・カルザイは麻薬の密輸に関わっているとも報じたが、アフガニスタンのこういう人物であれば驚くに値しないと、米政府筋は言う。

 米政府関係者の話で意外だったのは、今ある証拠をみるかぎり、カルザイ大統領本人は比較的「クリーン」らしいということだ。アフガニスタンの汚職を調査しているある米政府関係者によると、カルザイが公式に申告している資産は、1万ドル程度の衣類や宝石類だけらしい。

 複数の米政府筋の話では、弟の汚職疑惑はカルザイの評判を傷つけるほどの影響力はなさそうだ。とはいえ、大統領には必要な時に物資や資金の面で手助けしてくれる裕福な友人や支持者がいるという。

 アフメド・ワリ・カルザイはニューヨーク・タイムズの取材に対し、米軍や政府関係者に協力したことは認めたが、CIAから金を受け取ったことや麻薬密輸に関わっていることは否定した。

 今回の報道に疑問を呈する専門家はほとんどいないが、なぜこの時期に表面化したのか、誰が何のために情報をリークしたのかをめぐる憶測は広がりを見せている。今のところ、11月7日に大統領選の決選投票に臨むカルザイの足場を揺るがすために、オバマ政権やその周辺が意図的にリークしたという形跡は見当たらない。しかし裏に何があるにせよ、日に日に怪しくなるアフガニスタンの政治的展望を、さらに揺るがす不安材料であることは間違いない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

メラニア夫人、プーチン氏に書簡 子ども連れ去りに言

ワールド

米ロ首脳、ウクライナ安全保証を協議と伊首相 NAT

ワールド

ウクライナ支援とロシアへの圧力継続、欧州首脳が共同

ワールド

ウクライナ大統領18日訪米へ、うまくいけばプーチン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 4
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 5
    債務者救済かモラルハザードか 韓国50兆ウォン債務…
  • 6
    「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」(東京会場) …
  • 7
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 8
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 9
    【クイズ】次のうち、「軍事力ランキング」で世界ト…
  • 10
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた「復讐の技術」とは
  • 4
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 5
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 6
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 7
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 8
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 9
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 10
    産油国イラクで、農家が太陽光発電パネルを続々導入…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失…
  • 6
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 10
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中