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イラン

査察受け入れに隠された思惑

2009年10月29日(木)15時10分
ジェリー・グオ

 イラン中部コム近郊で新たな核関連施設の存在が判明した問題で、国際原子力機関(IAEA)は10月25日から査察を行う運びとなった(関連記事25ページ)。だがこの「快挙」を手放しで喜んではいられない。イラン政府は国連に協力することで国際的な制裁強化の動きにブレーキをかけることを狙っている。

 しかもアメリカの軍縮専門家によれば、秘密の核施設はコムを含めて、イラン国内におそらく5~6カ所はある。コムには旧式のIR-1型遠心分離機が3000基あるとみられており、現在の生産ペースでは、核爆弾1個分の高濃縮ウランを作るのに2年かかると、核兵器管理ウィスコンシン・プロジェクトのゲーリー・ミルホリン所長は言う。秘密施設がもう1つあれば、濃縮ウラン製造に必要な時間は1年で済む。

 イランはほかにも、重要な核関連施設を隠している可能性がある。イスファハンのウラン転換施設は、ナタンズのウラン濃縮施設にウランを提供しているが、どちらの施設もIAEAの監視下にある。

 一方、コムで必要なウランの量はイスファハンの備蓄量の約7~16%に当たる。IAEAの目を盗んでそれだけの量を動かすことは不可能だと、英プラウシェア財団の核兵器専門家アンドレアス・パースボは言う。

 つまりコムにウラン濃縮施設があるということは、ウラン転換施設など非公表の関連施設が存在する可能性があるということだ。9月26日付ニューヨーク・タイムズ紙によると、07年の国家情報評価(NIE)の機密部分にはイラン国内の疑わしい施設十数カ所が挙げられていたという。

[2009年11月 4日号掲載]

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