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客船沈没事故で遺族をでっち上げた米メディア

韓国人遺族の代わりに無関係のアジア人の映像を使用した米FOXニュースの罪

2014年5月8日(木)17時09分
エミリー・ロディッシュ

区別がつかない? 韓国人の遺族にはみえないが YouTube

 アジア人なんて、どこの国の人も似たようなもの──少なくとも米FOXニュースはそう考えていたようだ。

 韓国南西部・珍島沖で旅客船セウォル号の転覆した数日後、FOXニュースは事故とは無関係のアジア人らの映像を使い、まるで死者・行方不明者の家族であるかのように報じた。

 問題のシーンでは、転覆した船から脱出するよう当局が命令を出していれば、もっと多くの命が救えたのではないかという行方不明者の家族の思いがナレーションで語られている。だが、画面上で涙を流しているのは家族ではなく、韓国人ですらなさそうだ。どちらかといえば、ヒマラヤなど北方の山岳民族のように見える。

 韓国系アメリカ人向け月刊誌コリアムは、「アジアの他の地域の人々とみられる」と指摘。エベレストで先月発生した雪崩事故の犠牲者遺族ではないかと指摘する声も上がっている。

 セウォル号の事故では現場に多くの家族が駆けつけており、犠牲者の数はすでに250人以上に達している。これほどの大惨事であれば、FOXニュースが悲嘆に暮れる遺族の姿を探すことは決して難しくなかったはずだ。

 もっとも、似たようなメディアの怠慢は他にもある。オランダのニュース番組は昨年、内戦下のシリアの首都ダマスカスの風景として、ビデオゲーム「アサシン クリード」に登場するダマスカスの町の映像を放映した。

 英BBCもシリア紛争に関するニュースの中で、国連安保理(UNSC)のロゴとして、マイクロソフト社のビデオゲーム「Halo」に登場する国連宇宙軍(略称は同じUNSC)のロゴを使ってしまうという失態を犯している。

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