最新記事

米医療保険改革

デフォルト危機の次は「オバマケアゲート」

債務問題の焦点だったオバマケアがようやく開始の運びになったと思ったら、共和党の新たな攻撃材料が急浮上

2013年10月23日(水)15時51分
デービッド・ウィーゲル

危機に次ぐ危機 トラブルについて自分は「誰よりも怒りを覚えている」と演説したオバマ Kevin Lamarque-Reuters

 医療保険制度改革(オバマケア)の実施延期または中止を要求する米下院共和党とそれを拒否するバラク・オバマ大統領がようやく妥協し、世界を騒がせた米デフォルト危機がひとまず収まったと思ったら、オバマケアをめぐる新たな火種が飛び出してきた。

 オバマケアの一環として設立された保険購入サイトで、登録の際にエラーが表示されたり接続に長い時間がかかったりといった不具合が続出している。この技術的なトラブルに対して議会では、システムの設計を請け負った業者CGIフェデラルなどの責任を追及する動きが出ている。

 カナダに本社を置くIT企業CGIは、10月1日のサービス開始以前からシステムの開発は至って順調だと自信を見せていた。9月10日に行われた下院エネルギー商業委員会では、技術的な問題に懸念を示す委員たちに対し、次のように力説した。

「現時点でCGIフェデラルは、サービスが開始されてからすぐに個人の保険加入を可能にするというCMS(メディケア・メディケイド・サービス・センター)の要望を満たす機能性を提供できると確信している」

 だが、システムは欠陥品だった。問題が発覚すると野党・共和党の議員たちは公聴会の開催を要求し、「この数カ月間、政府側の担当者もシステム設計業者も委員会に対し、一様に10月1日のシステム運用開始に向けての準備は問題なく進んでいると断言してきた」と、一斉に攻撃を開始した。「だが保険加入サービスが始まってから3週間、システムは欠陥だらけだ」

 いまだ沈黙を守っている保健社会福祉省の担当者たちは、この混乱をどう思っているのだろう。さらに彼らは10月1日の運用開始以前の段階で、技術的な問題についてどれくらい把握していたのだろう。

 アメリカの大統領が見舞われてきた過去のスキャンダルを見れば、今回の問題が今後どのように展開するか予想できる。まず共和党が公聴会で責任を追及することにより、保健社会福祉省とシステム設計業者が交わした気まずい内容の電子メールなどの資料が明るみに出るだろう。高級官僚ではなく担当者レベルで何人かの逮捕者が出るかもしれない。そしてオバマはどこまで事態を把握していたのか、「大統領はどこまで知っていたのか」が徹底追及されることになる。「オバマケアゲート事件」の始まりかもしれない。

 とはいえ驚きなのは、数年がかりでこのシステムを作り上げる間、今回のような不具合が生じる可能性が内部からまったくリークされなかったことだ。

© 2013, Slate

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア、捕虜交換完了後に和平案を提示する用意=外相

ワールド

トランプ氏、日鉄のUSスチール買収承認の意向 「計

ワールド

アングル:AIで信号サイクル最適化、ブエノスアイレ

ビジネス

アングル:グローバル企業、トランプ関税の痛み分散 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:関税の歴史学
特集:関税の歴史学
2025年5月27日号(5/20発売)

アメリカ史が語る「関税と恐慌」の連鎖反応。歴史の教訓にトランプと世界が学ぶとき

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドローン母船」の残念な欠点
  • 2
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界の生産量の70%以上を占める国はどこ?
  • 3
    デンゼル・ワシントンを激怒させたカメラマンの「非礼すぎる」行為の映像...「誰だって怒る」と批判の声
  • 4
    友達と疎遠になったあなたへ...見直したい「大人の友…
  • 5
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワ…
  • 6
    アメリカよりもヨーロッパ...「氷の島」グリーンラン…
  • 7
    空と海から「挟み撃ち」の瞬間...ウクライナが黒海の…
  • 8
    「娘の眼球がこぼれ落ちてる!」見守りカメラに映っ…
  • 9
    【クイズ】PCやスマホに不可欠...「リチウム」の埋蔵…
  • 10
    備蓄米を放出しても「コメの値段は下がらない」 国内…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドローン母船」の残念な欠点
  • 4
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 5
    コストコが「あの商品」に販売制限...消費者が殺到し…
  • 6
    ワニの囲いに侵入した男性...「猛攻」を受け「絶叫」…
  • 7
    【クイズ】世界で1番「太陽光発電」を導入している国…
  • 8
    「空腹」こそが「未来の医療」になる時代へ...「ファ…
  • 9
    人間に近い汎用人工知能(AGI)で中国は米国を既に抜…
  • 10
    中ロが触手を伸ばす米領アリューシャン列島で「次の…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山…
  • 5
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 6
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 10
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中