最新記事

セキュリティ

アップルユーザー情報の耐えられない軽さ

ハッカー集団が入手したアップル端末1200万台分のユーザー情報はどこから流出したのか

2012年9月6日(木)17時45分
ライアン・ギャラガー

秘密が丸見え? iPhoneやiPadのユーザーはご用心 Ueslei Marcelino-Reuters

 今週に入り、「アンチセック」と名乗るハッカー集団が米連邦捜査局(FBI)の捜査員のノートパソコンからデータを盗み出したと発表した。このデータには、iPhoneやiPadなどのアップル製品およそ1200万台分のユーザー情報などが含まれているという。

 どころがFBIは声明の中で、データの流出はもとより、そもそもアップルのデータをFBIが入手しようとしたり実際に入手したことを示す「証拠は無い」と、主張している。

 その点についてアンチセックのメンバーに問い合わせると、「入手の経緯に関しては直接コメントしない」という返答が返ってきた。

 従って流出元はまだはっきりしないが、データそのものは本物らしい。アンチセックは、流出データのうちアップル端末100万台分のUDIDコードをネット上で公開している。デンマークのITセキュリティ研究者ピーター・クルーズは、そのテータの中から自分が所有するiPhoneとiPad2台の情報を発見した。

 アンチセックによれば、彼らが盗み出したデータには、iPhoneやiPadなどアップル社のiOS端末すべてについている識別コード(UDID)やユーザーの名前、郵便番号、携帯電話の番号、住所などが含まれている。

 昨年にはセキュリティ・コンサルタント会社ナルキューブのアルド・コルテシCEOが、UDIDを使えばiPhoneのユーザー名やメールアドレス、GPSの位置情報、フェースブックのプロフィールを入手できることを突き止めた。

 今回のデータ流出についてコルテシは、「もしUDIDが流出しているなら心配だ」と話している。

 しかし異なる見方もある。アップル製品の情報サイト「マックルーモアズ」は、「UDID単体では無害」であり、他の情報と併用されて初めて個人情報が悪用されるリスクが生じると指摘している。いずれにしても、ハッカー集団が入手した大量のデータが悪用される可能性は否定できない。

ハッカー摘発への反撃か

 データの流出元がFBIでないとしても、こうしたデータが捜査機関にとって有用だ。

 アメリカ自由人権協会のIT担当クリストファー・ソゴイアンいわく、本来なら通信会社から入手しなければならなかった情報をUDIDを使って手に入れることで、捜査機関はより迅速に人物の特定などができるようになるかもしれない。

 例えFBIがアップルユーザーの情報を活用していなかったいとしても、政府機関がこうした情報を保持すること自体認められない。「情報の大部分は犯罪歴がなく、捜査機関にリストアップされる筋合いのないと人たちのものの可能性が高い」と、ソゴイアンは言う。

 しかし現時点では、判明していることより疑問点の方が多い。アンチセックはインタビューに応じないし、FBIは情報漏洩を否定している。ハッカーを摘発するFBIへの意図的な妨害行為ではないかと、アンチセックを疑う声もある。

 今のところ確かなのは、膨大なデータが流出し、そこにはあなたの個人情報が含まれているかもしれないということだ。

© 2012, Slate

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ニデック、4―9月期純利益58%減 半期報告書のレ

ビジネス

年内に第三者委員会から最終報告が出る状況にはない=

ビジネス

26年春闘の要求、昨年より下向きベクトルで臨む選択

ビジネス

仏CPI、10月前年比+0.8%に減速 速報から下
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    文化の「魔改造」が得意な日本人は、外国人問題を乗…
  • 5
    「水爆弾」の恐怖...規模は「三峡ダムの3倍」、中国…
  • 6
    中国が進める「巨大ダム計画」の矛盾...グリーンでも…
  • 7
    『トイ・ストーリー4』は「無かったコト」に?...新…
  • 8
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 9
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 10
    ファン激怒...『スター・ウォーズ』人気キャラの続編…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 8
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 9
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 10
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中